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アイルランドモノ語り

       エニシダj
 以前、ここに書いたことのあるアイルランドの作家キアラン・カーソンの「琥珀捕り」「シャムロック・ティー」の訳者、アイルランド文学者、栩木伸明氏のアイルランドへの愛のこもった文集が「アイルランドモノ語り」です。ご本人はあとがきで「偏愛」と書いていますが、著者の心を奪った一つのモノ―絵や、古本も、真鍮のボタンなどなどなど―から広がり、つながっていくアイルランドの歴史や風土等など。
 軽く読めるエッセイ風で読者を引き込むものの、学者魂が、ついつい深く探求し続け、アイルランドの深みにどっぷり。雑学から専門の学問へ・・・みたいな一冊でした。

 この「アイルランドモノ語り」には、ジョイスやイェーツだけでなく、私の知らないアイルランド詩人の詩や古謡が、たくさん掲載され翻訳されています。形式ばっていない詩の数々は、アイルランド文学の楽しみを伝えてくれます。

 一番初めの文は、イェーツの「湖の島イニスフリー」が使われた映画の話から入り、手に入れた奇妙なモノとつなげ、「ふるさとはデンマーク」というタイトルに近づいて行くのです。
 そして、「岬めぐり」と題された章では、ダブリン湾の北側のホウス岬の話から始まり、イェーツの少年時代の家、ダブリンで買った絵、『海賊の女王』の話、自治権獲得の話、イェーツの詩、ユリシーズ、ジョイス・・・と、連想ゲームのように続きます。以下は、その中にでてきた詩です。

≪五月、またの名を   ビャルタネ、ベルタン、バールの火
燃え上がるハリエニシダが   石の上に花を落としている今
テオが隣にいたのを思い出す  去年の秋の暑かったあの日
ハリエニシダのさやが一生に破裂して   丘いちめんに無数の種を散らしていた
その丘が、今日はぐるり一面 炎をあげている≫
「ホウスの丘で」(ポーラ・ミーハン詩 栩木伸明訳)
(続く)
*「アイルランドモノ語り」(栩木伸明 みすず書房)
*「琥珀捕り」(キアラン・カーソン 栩木伸明訳 東京創元社)
*「シャムロック・ティー」(キアラン・カーソン 栩木伸明訳 東京創元社)

☆写真は、ハリエニシダではなく、日本でも5月に咲くエニシダ。ハリエニシダは茎のところに針があって、いかにもとげとげしています。

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