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鯰絵

      ちゅらj
 
(「絵が語る言葉を充分理解するだけの知識」から続き)
(承前)
 「鯰絵――民俗的想像力の世界」は、オランダ人の文化人類学(民俗学)教授コルネリウス・アウエハントが、表した研究・調査(論文)を、日本人4人が訳し、あるいは解説し、しかも、日本語の堪能な著者本人が校正・協力したという一冊です。

 「鯰絵」という浮世絵・錦絵(版画)は、1885年の安政の大地震で、大量に作られるようになった護符のようなものであり、わかりやすい形での情報提供という面も持っています。が、多くの浮世絵・錦絵が、ただの包み紙や緩衝材として消えていったり、遠く外国に散逸したりしたように、この「鯰絵」も、この教授の地道な調査・研究がなかったら、もっと闇の中に紛れてしまったかもしれないものだと知ります。実際、私は、よく知らなかった。

 という研究の小難しい背景はさることながら、研究とは程遠いおばちゃんが読んでも面白い一冊なのは、図版が多いこと。多様なこと。それにまた、なんとも「なまず」の顔のひょうきんなこと、可愛いこと。しかも、掲載されている図版のほとんどは、絵としても、鑑賞に耐えるものだというところが、江戸の力量を感じるのです。また、受け入れた庶民のセンスの良さ。

  地震と鯰というなんだか非科学的なつながりも、実は鯰に電気受容力があり、地震を感知する能力が高いものであるという後世の大真面目な研究でわかってきているように、当時の民間の伝承も、いいかげんなものではないことがわかります。
 つまり、知性とユーモアを併せ持ったのが、「鯰絵」だということです。

 そして、なにゆえ、「鯰絵」が、この頃大量に出回ったかという「解説文」
≪・・・安政大地震といえば、時代的には、幕末の変動期の真只中であり、一方に社会的・政治的不安が高揚していた時期である。この時点での世界の破局が具体化し、世直し鯰を発現させたのである。・・・≫を読むと、今も地震の国、日本で、何が「世直し鯰」となるのだろうと考えます。

*「鯰絵――民俗的想像力の世界」(C.アウエハント、小松 和彦、中沢 新一、 飯島 吉晴、古家信平訳 図版多数 岩波文庫 )
☆写真は、沖縄 美ら海水族館(撮影;&Co.A)

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