FC2ブログ
 

みんなみすべくきたすべく

エリザベス女王のお針子 1

             お針子j
  「エリザベス女王のお針子―裏切りの麗しきマント」(ケイト・ペニントン 柳井薫訳 徳間書店)

 歴史小説には、フィクションなのに、実在の人物が巧い具合に配置され、歴史という深い世界に引き連り込んでくれるものがあります。
 この若い人向けに書かれた「エリザベス女王のお針子」も、実在のエリザベス女王、その寵臣ウォーター・ローリーだけでなく、主人公の少女、お針子のメアリーまでも、実在しています。
 また、ウォルター・ローリーがオシャレな人で、一時期、エリザベス女王のお気にいりだったのは、史実のようです。
 が、エリザベス女王が歩を進める、その前にあった水たまりに、惜しげもなくウォルター・ローリーはマントを広げ、その上を女王が歩いたことは、ありそうながら、フィクションらしい。
 そして、お針子のメアリー・デヴェローは、実際にエリザベス女王とそのあとのジェームズ1世の腕のいいお針子だったというのも史実。

 これだけのことがそろって、「エリザベス女王のお針子」の骨格はできています。
そして、その設定は、エリザベス女王暗殺計画を知ってしまうお針子の少女の話で、最後まではらはらさせるサスペンス仕立てになっています。大人の、しかも、国の魑魅魍魎が蠢く世界を少女の目で見ているのです。

 また、このお話を深めるのは、そこに出てくる衣装や刺繍や手芸の数々の表現です。訳だけではわからない、刺繍の見本写真や肖像画でもついていれば、読者ももう少しアプローチできるのにと、思います。

≪女王が身につけているものすべてが、その富と贅沢な生活を物語っていた。すばらしい切り抜き刺繍のひだ襟、あざやかな赤い髪を飾る無数の真珠。ドレスのたっぷりした袖は、ルビーをあしらったサテンのリボンで胴着とつながれている。胴着の前見頃は細長いハート型で、ウエストのところで下にむかってとがっている。その胴着全体に金の渦巻き模様の刺繍が施されている。≫

 読者が、美しいもののイメージを自分なりに膨らませるといった点では、挿絵を必要としないのかもしれません。が、やはり、知識の足りないところは、さりげなく助けが欲しいものです。時代も古く、ましてや英国エリザベス一世の時代なのですから。
(「エリザベス女王のお針子2」に続く)

☆写真は、この本を紹介してくれた中学三年(当時)の女の子が描いたものです。メアリーが出窓で刺繍をしています。優しい絵です。(撮影:&Co.Ar. 作品:&Co.Hr.)

PageTop