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みんなみすべくきたすべく

焼麺麭(トースト)

      湖水地方朝食j
(「一匹のむく犬の如く」から続き)
 (承前)
 結局、夏目漱石は英国や英国式が大嫌い!と思っていたら、
≪朝食は耳を落とした食パンを、火鉢の上に乗せて自分で焼き、バターをつける≫(夏目伸六『父・漱石とその周辺』)
へぇ~!そうなんだ。

そして、作品の中にも、こんなこと書いています。(『明暗』)
≪やがて好い香(におい)のするトーストと濃いけむりを立てるウーロン茶とがお延の手で用意された。朝飯(あさめし)とも午飯(ひるめし)とも片のつかない、極めて単純な西洋流の食事を済ました後で、津田は独りごとのように云った。・・・・≫

 英国で一番おいしいのが、朝ごはん。あのいい匂いのするトースト。うーん、わかるわかる!
ところが、トーストなんぞ食すのは、明治男の沽券にかかわるのか、同じ作品で、こんなことも言っています。

≪女が皿の上に狐色に焦げたトーストを持って来た。「お延、叔父さんは情けない事になっちまったよ。日本に生れて米の飯が食えないんだから可哀想だろう」糖尿病の叔父は既定の分量以外に澱粉質を摂取する事を主治医から厳禁されてしまったのである。≫

 で、この後、病院食には、こんなことも
≪・・・横倒しに引っ繰り返された牛乳の壜の下に、鶏卵(たまご)の殻が一つ、その重みで押し潰されている傍に、歯痕(はがた)のついた焼麺麭(トースト)が食欠(くいかけ)のまま投げ出されてあった。しかもほかにまだ一枚手をつけないのが、綺麗に皿の上に載っていた。玉子もまだ一つ残っていた。≫

 えっ!?牛乳に、パンが複数、卵も複数!しっかりした朝ご飯です。実際、 「倫敦消息」の中で、自らのロンドンの朝食を、「オートミール。ベーコンが一片に玉子一つまたは二片。焼きパン二片茶一杯」と書いています。しかも、オートミールは麦のお粥のようで好物だと書いています。ふむふむ。

 漱石の文学って、絵画からもアプローチできるし、もしかして、食べものからも近づける?
(「文人悪食」に続く)

☆写真は、英国湖水地方 イースワイク荘朝食(撮影:&Co. I)

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