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夢十夜 

ロセッティ百合j
≪こんな夢を見た。≫・・・・・で始まる夏目漱石の「夢十夜」は、長男が中学で習うまで読んだことがありませんでした。
「お母さんの好きなイギリスの絵みたいな話やねん。いっぺん読んでみ。」

 確かに、第一夜の最後のところは、当時、はまっていたラファエル前派のダンテ・ガブリエル・ロセッティの「マリアの少女時代」や「受胎告知」の白い百合が思い浮かびます。
 花や鳥の持つ象徴的な意味合いを絵画の中に織り込み何かを物語る絵。先のジョン・エヴァレット・ミレイの「オフィーリア」にも、数々の花が描かれ、それぞれが何か意味を持つとされています。ラファエル前派の絵は、好きな絵というわけではないのに、また見てしまう・・・というのは、その絵の中に「物語られている」ものを読みとろとする鑑賞方法なのかもしれません。

 「夏目漱石の美術世界展」には、「夢十夜」の第十夜に関連して「ガダラの豚の奇跡」(ブルトン・リヴィエアー画)という絵が来ていて、ロセッティの「マリアの少女時代」や「受胎告知」は来ていませんでした。もちろん、漱石の描く第一夜のテーマとロセッティの絵画の関連性が見出されないからでしょう。が、しかし、当時、中学生だった長男は、漱石がラファエル前派の絵画に影響を受けていたとはしらず、母に教えてくれたようでした。

≪・・・すると石の下から斜(はす)に自分の方へ向いて青い茎が伸びて来た。見る間に長くなってちょうど自分の胸のあたりまで来て留まった。と思うと、すらりと揺ぐ茎の頂(いただき)に、心持首を傾けていた細長い一輪の蕾が、ふっくらと弁(はなびら)を開いた。真白な百合が鼻の先で骨に徹える(こたえる)ほど匂った。そこへ遥(はるか)の上から、ぽたりと露が落ちたので、花は自分の重みでふらふらと動いた。自分は首を前へ出して冷たい露の滴る(したたる)、白い花弁(はなびら)に接吻した。自分が百合から顔を話す拍子に思わず、遠い空を見たら、暁(あかつき)の星がたった一つ瞬いて(またたいて)いた。「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。≫

☆写真右と中央は「マリアの少女時代」すくっと伸びた百合が見えますか?写真左は、「受胎告知」どれも、ダンテ・ガブリエル・ロセッティ。

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