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みんなみすべくきたすべく

牛乳屋テヴィエ

                        バルコニーjj
(「みんな鵞鳥の足をしている」から続き)
(承前) イディッシュ文学、もう一つ。
「牛乳屋テヴィエ」
(ショレム・アレイヘム 西成彦訳 岩波文庫 表紙カバーは、シャガール)

 牛乳屋のテヴィエが作者にエピソードを打明ける形、つまり、話し言葉で物語は進みます。シンガーの作品も口語が多く、テンポが速いのですが、さらに口語のみで、話が進むので、時には落語のような掛けあいもあります。彼のとぼけた味は、ユダヤ人の持つ処世術なのか。テヴィエは、可笑しい人、いえ、懐の大きい人です。

 この「牛乳屋のテヴィエ」は、ミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」の原作ですが、私は、舞台を見たことがなく、どの部分が舞台になったのかも、知りません。舞台の先入観がない分、原作の「行きなさい」の章は、感銘を受けました。異教徒と結婚した娘が戻って来た章が「行きなさい」で、舞台ではハッピーエンディングのようです。が、実際は、違う・・・「いまどきのこどもたち」という章が表すように、いまどきの子どもたち(娘たち)の結婚事情からユダヤを考える、というのが原作の中心にあります。思想・宗教・金銭・差別など、テヴィエの面白おかしい口調で話を進めながらも、深い深い淵を見ることができるのが原作でした。

 訳者後書きでは、「牛乳屋」が「屋根の上のバイオリン弾き」になっていく経緯、なにゆえ、表紙にシャガールかという経緯、そして、イディッシュ語についても、簡明に説明されています。なにより、テヴィエが目の前で喋っている様な臨場感、それらは、先のシンガー傑作選「不浄の血」の訳者でもある西成彦氏の力に負うところが大きいものだと思います。

 シンガーの話にも、なるほどと思う箇所が多々ありますが、この話にも、ありました。その中の一つ。
「・・・知恵も後悔も、いざというときには役に立たず、後からやってくるもんだ。・・・」

☆写真は、我が家のバルコニー、5月の薔薇。

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