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オタバリの少年探偵たち

ハムステッド路地j

  2013年アカデミー男優賞を取ったのは、映画『リンカーン』のダニエル・ディ・ルイス(1957~)ですが、彼の父親はセシル・ディ・ルイス(1904~1972)と言う、英国では有名な詩人です。
 彼は、桂冠詩人に任命され(1967~72)、王家の慶弔の詩をよむ人でした。また、ニコラス・ブレイクと言う名前で推理・探偵小説もたくさん書いています。この人の作品を多く知っているわけではありませんが、「詩を読む若き人々のために」(1944)と「オタバリの少年探偵たち」(1948)は、若い人や子どもたちに向けて書かれた優れた本です。

 「オタバリの少年探偵たち」は、エドワード・アーディゾーニの挿絵、瀬田貞二の訳で、下町の男の子たちの生き生きとした動きが伝わってくる一冊です。(現在は、脇明子訳)
 やんちゃが仕事の男の子たち、どの子もいい子で、ほっとします。そりゃ、事件が起こるのですから、ちょっとした行き違いもありますが、子ども時代を、思う存分楽しむ幸せな子どもたち。ハラハラしながら、一気に読めます。
 奇をてらう展開等なくても、人と人とのつながり、その善意を信じる前向きな力を感じ、読み進むことができる「オタバリの少年探偵たち」です。

 それに、アーディゾーニの挿絵!
 訳者瀬田貞二は「絵本論」(福音館)の中で、テッド少年の退場の場面≪・・・テッドの通る道を、むちの刑を受ける時のように開けたありさまだ。そのむちは、ぬれたタオルやなんかでなく、沈黙とうたぐりの小路だった。テッドはそこを通らねばならなかった。少年たちは身をひいて通したのだ、テッドがよごれきった身であるように。ぼくは決して忘れまい、このおしだまったとがめの砲火をくぐっていくテッドの顔の表情を。詩の一行が頭に浮かんだ。・・・≫の挿絵を、こう評します。
「・・・生存的というか、暗示的というか、とにかく物語の気分を十分にくゆらして事件を解き明かす意味では、これこそ挿絵的というほかはない。」
(「詩を読む若き人々のために」に続く)

*「詩を読む若き人々のために」(セシル・ディ・ルイス 深瀬基寛訳 筑摩叢書)
*「オタバリの少年探偵たち」(C.D.ルイス 瀬田貞二訳 脇明子訳 岩波少年文庫)
*「絵本論」(瀬田貞二 福音館)
☆写真は、ロンドン ハムステッド路地

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