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二つの薔薇

              赤薔薇j
 「二つの薔薇」 (ロバート・スティーブンソン文 中村徳三郎訳 岩波文庫)
 ロバート・スティーブンソンは、宝島の作家として、有名ですが、この「二つの薔薇」には、確か、先日、ニュースになったリチャード3世も出て来たことを思い出し、読み返してみました。リチャード3世は、最後に出てくる、まあ、「しめ」みたいな人です。

 リチャード三世は、主人公の青年ディック(リチャード)にナイトの称号を与えるものの、ディックは、その後を暗示するかのように、冷めた目でこう言うのです。
≪・・・ディックは、公(リチャード三世のこと)の眼に對すると、身が竦む想いがした。其眼の中に正気とは思えぬ位の興奮と勇氣と残忍さを認め、将来を想うと怖ろしくなった。成程公は戰列の先登に馬を進める様な勇武な心をもっているが、戰も終り、平和な時代になり自分の腹心の者に取圍まれている様な時にも、尚人を殺す様な事をするのではないかと氣遣われた。≫

 二つの薔薇というのは、大きく言うと、ヨーク家とランカスター家の争いなのですが、スティーブンソンの描く「二つの薔薇」は、最後には、ナイトになる青年と、美しい娘の話を軸に進めます。
 ただのラブロマンスではなく、騎士道の話でもあって、前に読んだときも今回も、この始まりの混み入っていた部分を越えるのは至難の業。ディックという主人公の青年の後見人が、誰側に所属し、誰が誰を恨んでいるのか、慣れるまでよくわかりません。
 
 ただ、前回も今回も読み終えることができたのは、男装をした女の子ジョン(ジョアナ)と主人公ディック(リチャード)が掛けあう頃から、面白くなってくるからです。特に、男装のジョン(ジョアナ)が軟弱な青年だと思っているときのディックの態度や会話が、読んでいる者を冷や冷やさせます。(ニタニタ?)
 お互いが、いつしか心を寄せ合っていくくだりは、なかなか面白いのです。

 また、訳も少々古いままで、誤記もあり、読めない漢字も多くて四苦八苦です。(1950年初版、所蔵は1999年第九版)文庫版での翻訳は、これしかないようなので、新訳が待たれます。
 ジョアナのことをジョウナと平気で印刷したままだし、化粧が崩れたジョアナが「繪具が少し剥げた」というのは、やっぱり、変。(「時の娘 その1」に続く)

☆写真は、英国ケンブリッジ セントジョンカレッジ。左下に赤く塗られた薔薇(ランカスター家)、右下に、鎖のついた格子戸(このカレッジの創始者マーガレット・ボーフォートのシンボルらしい。ヘンリー7世の母)。

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