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みんなみすべくきたすべく

ヘルメースの賜物

ホメロスjj

(承前)
 石井桃子編訳「ギリシャ神話」(のら書店 あかね書房)の「アポロンとヘルメス」は確かに読みやすく、子どもたちも楽しめる派内になっていましたが、ホメーロスの名を冠して伝えられた「ヘルメースへの讃歌」は、石井桃子編訳「ギリシャ神話」のものより、長い展開であり、話に奥行きがあります。そして、讃歌ですから、誰かに、朗詠してほしい。
 「ギリシャ神話 『ホメーロス讃歌』より」(逸見喜一郎・片山英男訳 岩波文庫)

草を食べようとよちよち歩いていた亀を見つけた時の幼児ヘルメースはこう言います。
≪これは早々に何とも縁起の良い代物だ*、あだやおろそかにするものか。姿の愛らしい踊りの刻み手よ、宴の伴侶よ、こんにちは。現れてくれて喜ばしい。山に棲まう亀よ、どこで、結構な手なぐめとなるこの斑の殻をまとったのだ。お前を手に取って、家に持ち帰ろう。得になるもだ、馬鹿にはしないぞ、まずもって役立ってもらうのだから。家にいるほうがいい、外は危ない(と言うじゃないか)。生きているうちは、お前は災い多い呪文を防ぐ楯となるものだ。だが死んだ後は、上手に歌を歌えよう。≫
*訳注:::「縁起の良い代物」――古代ギリシャでは拾い物や偶然の発見物を「ヘルメースの賜物(ヘルマイオン)と称した。

また、幼児のヘルメースが、竪琴をかき鳴らし、美しい声で歌うと、怒っていたアポロンは、その魅力に取りつかれ、こう言います。
≪牛を屠った策士よ、厄介者の宴の朋よ。今お前の案じたものは、五十頭の牛の償いとなるものだ。これなら互いに平和な決着もつけられるのではあるまいか。…(中略)…今初めて耳にするこの音には驚かされる。思うにきっと、いかなる者も、オリュンパスに館を構える神々さえも誰ひとり、いまだかつて覚えのない音だろう――…(中略)・・・何たる技、逃れがたい煩いの何たる慰め、何たる腕前であろうか。陽気な気分でも愛でも甘い眠りでも、まさしくどれも欠けることなく、思うままではないか。…(後略)…≫

ま、支離滅裂なところの多いギリシャ神話ですから、生まれた月初めの4日目もその日のうちに竪琴を奏で、アポロンの牛を盗んだヘルメースが、言葉巧みに、アポロンとやりあうところが面白い。
 ヘルメスは、走るのが早いので、運動の神、伝令の神ともいわれますが、生後すぐ、盗みを働き、嘘をついたので➡➡、策略の神とも言われているって、どうよ? (続く) 

☆写真は、大英博物館展図録「奉納レリーフ ホメロス礼賛」(紀元前150年~120年頃 ローマ近郊出土 大理石)左下に座っているのがホメロス。牛の姿も見えます。最上階にはゼウス中段には竪琴を持ったアポロン。

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