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みんなみすべくきたすべく

忘れっぽい青年 

      アドリアネj
(承前)
 バッカスのことより、ミノタウルスを退治したテセウス(シシウス)のことを、書いておかねば。
 
 そもそも、ミノス(マイノス ミーノース)王が、迷宮に閉じ込めたミノタウルスを何故、テセウスが退治に行くかと言うと、テセウスの父親はオイゲウス(イージアス王)でしたが、テセウスは成長するまで、父親に会っていませんでした。父親が課した大きな岩をのけて、剣やサンダルを取り出せたテセウスは、父親に会いに行きますが、そこに至るには、数々の苦難が待ち受け、さらに、父王のそばに来ても、メディア妃(ミディア)や王の甥たちが居て、一筋縄では面会も承認もままならないもの、一端、父子の再会が叶うと、父王は、自分の領地から、ミノス王に迷宮に毎年7人の若者と7人娘を、生贄に差し出してきた話をします。父王のアゼナイ市(アテネ)と、ミノス王のクレート島(クレタ島)が戦争をし、負けた父王は14人の生贄を差し出し苦しんできたのです。 「ギリシャ神話物語 上下」(ナサニエル・ホーソン 神宮輝夫訳 エドモンド・デュラック絵 新書館)
 石井桃子編訳「ギリシャ神話」(のら書店 あかね書房)では、ミノス王の息子がアテナイで殺されたことがあり、その仇討ちで、アテナイに攻めてきて、殺された王子の命の償いとして9年目ごとに7人ずつの貴族の娘・息子を貢物としてクレタ島に送ったとあります。

 それで、テセウス(シシウス)が退治に向かいます。

 が、最後は、無事を待ちわびる父王とテセウスの間に行き違い。
≪シシウスよ、おまえが運よく、ミノトー(ミノタウルス)の口から逃れることができたならば、あの陰気な帆(黒い帆)など破りとって、日光のように明るい帆をあげてくれぬか。その帆が水平線上に見えたならば、このわたしも国びとみなも、おまえが勝ってもどってくると知って、アゼンス(アテナイ アテネ)はじまって以来の喜びの声を迎えるであろうから≫

 ところが、ミノタウルスを無事退治したシシウス(テセウス)は、≪ことがうまく運んだために、若者たちはうきうきと、競技に踊りに、また他の楽しみにときをすごし、その間、帆の色が黒か白か虹色か、すこしも考えてみなかった。≫
 で。待ちわびていた父王は、生き続ける気力をなくし、海に身を投げた…という話。「ギリシャ神話物語 上下」(ナサニエル・ホーソン 神宮輝夫訳 エドモンド・デュラック絵 新書館)***石井桃子訳「ギリシャ神話」では、アドリアネを置き去りにしたり、黒い帆を白い帆に変えるのを忘れたりするテセウスを 忘れっぽい青年としています。

 ん?これって、「トリスタンとイズー」(ローズマリ・サトクリフ 井辻朱美訳 沖積舎)とモチーフ一緒!死を前にしたトリスタンが、コンウォールからイズーが自分(トリスタン)を許してくれるなら(一緒に来てくれるなら)白い帆を、そうでなければ黒い帆を掲げるようにした話。ただし、あれには、もう一人のイズーの嫉妬という要因があり、忘れてたんじゃないけどね。(続く)

☆写真は、ワッツ「アリアドネ」(ウィンスロップコレクション図録)置き去りにされ、茫然自失の彼女の手には、迷宮から出てくるために用意した糸玉。

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