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悲しくも現実のものとなっていること

どんぐり1
(承前)「白い病」(カレル・チャペック 阿部賢一訳 岩波文庫)➡➡は、フィクションですが、これは、1937年のチェコで出版されています。話の舞台は戦争目前の設定です。
 
  特効薬を発見した医師ガレーン博士と、戦争を推進しようとする者とのやり取りは、息をのむものがあり、両者の思いの深さには、人間の業が見えます。それは、小国チェコにおけるカレル・チャペック、そしてその兄、逮捕され収容所で亡くなったヨゼフ・チャペック➡➡の生涯、彼らの父が医師だったこと・・・などなど、深い深い意味を含む1冊なのです。

 この本の前書きを読むと、一体これは、いつ書かれたの?と思います。というのも、「今日」という言葉が何度も使われ、当時の「今」と、今現在の「今」が、重なる部分が多いからです。

≪・…政治権力の精神は、今日の世界状況では、倫理的、民主主義的な人間愛というヨーロッパの伝統と対立している。年を追うごとに、この衝突は国際関係において激しさを増しているが、同時に、各国の内政問題にもなっている。外面的には、今日のヨーロッパで戦争が勃発するのではないかという緊張感が常在しており、暴力や殺人によって政治的問題を解決しようとする傾向が顕著になっている。たしかに、今日の世界的な対立は、経済的、社会的な概念を用いて定義できるかもしれない。もしくは生物学的に生存競争としても説明できるかもしれない。だが、その最も劇的な様相は、対立する二つの大きな理念の衝突に見られる。一方には、全人類への人間愛、民主主義的な自由、世界平和、人間らしい生や権利への敬意という倫理的な理念がある。他方には、権力や支配への志向、民族主義や拡張主義という反人間性を謳う力強い理念があり、そこで暴力は装置として歓迎され、人間の命はその単なる道具にすぎない。今日の一般的な表現を用いるならば、それは、民主主義の理念と、野心的で際限を知らない専制政治の理念の対立である。このような対立が悲しくも現実のものとなっていることが『白い病』を執筆する契機となった。≫

 この本が、今日 この時に、手に届いたこと(初訳出ではないとはいえ)、大きな意味があると思います。(続く)

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