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みんなみすべくきたすべく

『たのしい川べ』には悲しみがある。

ヒキガエル5
(承前)
 さて、川ネズミとモグラの葛藤、あるいは「たのしい川べ」の深さについて、瀬田貞二は、【夢みるひとびと④-グレアム『たのしい川べ』】という文で、こう言っています。(「瀬田貞二子どもの本評論集・児童文学論 福音館)

≪家をすてて家にひかれるモグラ、家にいて旅を思い病むネズミ、忘却と耐えることを治療とほじのために頭をたれて受け入れる小さな獣たち。多くの喜びの涙でさえ、こみあげてくる苦痛の露出のように、ふたりの孤独な友情のなかにだけ、やっと流すことをゆるされるのではないか。『たのしい川べ』には悲しみがある。それは、悲しみの節づけをともなういやされない憧れの歌である。もちろん、明るい自然賛歌でもあって、この重層が作品を深くしていることは事実である。明暗悲喜、遠近緩急ゆたかな傑作をなして、大人にも子どもにも愛されるようになったこともいなめない。≫

 そうなのです。もともとは、ケネス・グレーアムが息子のために語り始めた話なのですが、本として構成する際に 何か深いところに伝わる章 例えば「旅びとたち」➡➡「なつかしのわが家」「あかつきのパン笛」などの章を組み入れ、結果として、大人も楽しめるようにしていると思います。カ・リ・リ・リとしては、第1章が特段好きですが・・・

 幼くして母親を亡くし、父親とも別れ祖母の暮らす、テムズ河畔クッカム・ディーンで、少年期を過ごし、優秀な成績だったにもかかわらず、学費の問題でオックスフォードに進学せず銀行家として一生過ごしたケネス・グレーアムという作家の深いところを表現したと考えられます。(続く)

☆写真は、サージェントの描いたケネス・グレーアム(*サージェントは、カーネーション・リリー・リリー・ローズを描いた画家➡➡と、アーネスト・シェパードの挿絵。

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