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作者あとがき

デカメロンj
 (承前)
 講談社文芸文庫 河島英昭訳「デカメロン」(ボッカチオ著)の「作者のあとがき」です。(河出文庫 平川訳では、「著者結び」となっています。)

昨日の第4日前書き➡➡で、世間からの非難に対して、申し開きをし、敵の出鼻をくじいたはずでしたが、やはり100話の後も、本人がすっきりしないので、今度は最後の最後で、もう一度、この「デカメロン」について発信するのです。・・・が、この時点で、100話も読んでもらったのですから、つまり、100話も評判になったのですから、十分に受け入れられ、娯楽としての地位を築いたと思うのですが、やはり、不当な扱いだと腹の虫が収まらなかったと見えます。

≪・・・・もしかしたら、あなた方女性のなかには、これらの短編物語(ノヴェッラ)を書き進めるなかで、私が、ときには貴婦人たちの口に上らせたり、あるいは話させたり聞かせたりするなかで、あまりにもしばしば、貞淑な女性たちにはふさわしからぬ事柄を話題にしてしまい、淫らに過ぎたきらいがある。と言われる方がおられるかもしれない。そのようなことは、断固として、私は否定する。なぜなら、貞淑な語彙を用いて言う限り、だれにとっても言ってはならぬ事柄など一つもないはずであり、この点に関しては、充分に適切に自分が成し遂げたものと思っているからだ。しかし、それはおっしゃるとおりだ、としておいてもよろしい。なぜなら・・・・・≫

≪…画家の絵筆に許されるのと変わらぬ能力が私のペンにも許されてしかるべきなのに、画家のほうだけには、何ら非難も浴びせられずに、少なくとも正当な行為として、聖ミケーレが易々と剣や槍で蛇をつく絵を描くことが許され、聖ジョルジョがところ構わずに竜を傷つける描写をすることが許されるのであり、そこまでは我慢するとしても、キリストを男として描くことが画家に許され、イヴを女として描くことも、さらには全人類の救済のために十字架にかかったお方に対してまで、その足を一本の釘で打ちつけたり、二本の釘で打ちつけたりすることが許されるのである・・・≫

 ・・・延々と、愚痴るのですが、ボッカチオは、こう言って、読者の心をつかんでいきます。
≪・・・これらの物語の群れのなかへ踏みこんで、読み抜こうとなさる方は、どうか、気にさわるものはそのままにして、面白そうなものだけを、お読み願いたい。どなたのご期待にも欺かぬように、いずれの短編物語の額にも、それぞれのうちに秘められた中身を、書き残しておいたから。さらにまた、必ずや、これらのなかには、長すぎる物語が入っている、と言う方もおられるであろう。そういう向きには、敢えて言っておくが、たとえどれほど短くても、他にしなければならない用事がある方には、物語を読むのは狂気の沙汰にも等しいことなのだ。・・・・≫

この後書きを読むと、物語を読むことは娯楽なんだと、現代の我々にも通じるメッセージをボッカチオが発信しているのがわかります。(続く)

☆写真は、英国ラファエル前派集団につながるウォーターハウス描く「デカメロン」

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