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みんなみすべくきたすべく

バジル

バジルj
 コロナ第一回自粛ベランダ菜園で、夏場に取れすぎたのは、青じそと、パセリと、バジルでした。どれも、香草。
 青じそのかかりすぎた冷ややっこ。
 刻んだパセリで、中身が見えない冷製スープ。
 そして、モツァレラとトマトとバジルの料理では、まだ減らないので、毎朝の卵焼きに溢れるほど入れるバジル。

 で、バジルの生命力を見ていたら、一枚の絵を思い出しました。
 英国ラファエル前派集団のホフマン・ハントの「イザベラとバジルの鉢」です。バジルの鉢を抱えた、女性。なんで、バジル?足元には、バラの花、落ちてるやん・・・

 昔、英国ラファエル前派集団にはまっていた時期がありました。ほとんどが、見ていて励まされるような絵画ではありません。どちらかといえば、おどろおどろしいし、意味深長。
 絵に描かれた、部屋の設えや花も、その象徴するもの、その意味するもの、を描いているらしく、絵を見ながら、その物語を読むことを楽しんでいました。「物語る絵」といわれるのが、それらの絵でした。そして、その画家たちの背景も、ほとんどが、意味深長。

 で、今更ながら、調べてみると、このホフマン・ハントの絵は、ボッカチオ「デカメロン」第4日第5話にある話であり、その後、それを土台に英国詩人のキーツが書いた「イザベラ、またはバジルの鉢――ボッカチオに取材した物語」(キーツ詩集 中村健二訳 岩波文庫)という詩から生まれた絵なのです。
 おお、デカメロン。14世紀フィレンツェ、ペスト禍で集まった10人が一日10話ずつ話した10日間の話。

 「バジル」の絵は、キーツのこの箇所。
≪それから、絹のスカーフのなかに――アラビアで摘まれた貴重な花々の香水や、冷たい螺旋の管から爽やかに抽出された高貴な液体が甘く匂っている――彼女はそれを包んだ。その墓として 植木鉢を選び、なかに首を置くと、 土をかぶせ、その上に香しいバジルを植え、 それをいつも自分の涙で湿らせた。・・・・≫

 ボッカチオ「デカメロン」第4日第5話では・・・
≪帰宅すると、その頭とともに寝室に閉じこもった。百度も千度も頭のあらゆる部分に接吻し、その頭上で辛い涙を流した。長いあいだ泣いたから涙で頭がきれいに洗い清められたほどである。そこで大きな鉢を選んだ。マヨナラやバジリコなどを植えるのに用いる大鉢である。頭を美しい布で包んでその中に安置すると、上に土をかけた。そしてその土の上にサレルノ産の美しいバジリコを何株か植えた。それにそそぐのは薔薇やオレンジの花を蒸留して拵えた水か、さもなければ自分の涙だけであった。それ以外の水をかけることはけっしてない。そしていつもこの鉢の近くに座ることが習いとなり、その鉢を熱い想いをこめてうっとりと見つめていた・・・・≫(平川祐弘訳 河出文庫)

**恋人たちの名は、「キーツ」では、イザベラとロレンゾ。「デカメロン」では、リザベッタ、ロレンツォ。
***恋人を殺したのは、彼女のお兄さんのたちですが、キーツでは2人の兄。デカメロンでは3人の兄。((続く)

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