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みんなみすべくきたすべく

本質的なものに帰らねばならぬ

ノートルダム十字架j

(承前)カミュ「ペスト」(宮崎嶺雄訳 新潮文庫)

加えて、神父が延々と説教する場面があります。

≪・・・・神父はさらに豊かな潤色をもって、災禍の悲壮なイメージを語り続けた。・・・・・(中略)・・・・・・こういう次第で、あなたがたの来ることに待ち疲れたもうた神は、災禍があなたがたを訪れるに任せ、およそ人類の歴史なるものが生まれて以来、罪ある町のことごとくに訪れたごとく、それが訪れるに任せたもうたのであります。あなた方は今や罪の何ものたるかを知るのであります。--カインとその子らがそれを知ったように、洪水以前の人々が、ソドムとゴモラの人々が、ファラオンとヨブとまたすべてののろわれし者どもがそれを知ったように、知るのであります。そしてこの町があなたがたとこの災禍を閉じこめて囲いを閉ざした日以来、あなたがたはちょうどすべての人々がしたように、一つの新たな眼を生き物や事物の上に向けているのであります。あなたがたは今こそしてついに、本質的なものに帰らねばならぬことを知ったのであります。・・・・≫

 また、後半で、一人の少年が、ペストでもがき苦しみ亡くなります。医者のリウーは、≪まったく、あの子だけは、すくなくとも罪のない者でした。≫と激しく叩きつけるように、神父にいいます。神父は≪それはわかります。まったく憤りたくなるようなことです。しかし、それはわれわれの尺度を越えたことだからです。しかし、おそらくわれわれは、自分たちに理解できないことを愛さねばならないのです。≫すると、医者リウーは、身のうちに感じえたかぎりの力と情熱をこめて、神父の顔を見つめ、頭をふります。
≪そんなことはありません。僕は愛というものをもっと違ったふうに考えています。そうして、子供たちが責めさいなまれるように作られたこんな世界を愛することなどは、死んでも肯んじません。≫

 結局、神父自身もペストで亡くなってしまいます。
 不条理を受け入れること・・・これは、大きな課題です。解決しない課題でしょう。(続く)

☆写真は、パリ 火災以前のノートルダム寺院の上にあった十字架。

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