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ケルトとローマの息子

ケルト2
 ペスト禍を扱った作品➡➡  ➡➡  ➡➡ を、次々読んでいったのですが、シュティフター➡➡だけでなく、サトクリフにも疫病が関係する話があります。シュティフターもサトクリフも、大人も若年層も楽しめるという点では共通していると思います。

 「ケルトとローマの息子」(ローズマリ・サトクリフ作 灰島かり訳 ほるぷ出版)
 この本では、他のペスト禍(疫病)とちがって、その話題を大きく取り扱っているわけではありません。ケルトの部族に助けられ育てられたローマの少年が、疫病神扱いされ、部族を出ていき、その後、ローマに奴隷となって、渡り、過酷な日々の後、またブリテンに戻り…という話ですから、疫病が、話のきっかけにはなっていますが、疫病自体を取り扱っているわけではありません。また、疫病と大きなくくりで書かれ、ペストやコレラ、スペイン風邪などと言わないのは、時代がローマンブリテン(西暦紀元頃~5世紀)だからです。

≪・・・作物は枯れ、羊は死んだ。獲物はとれず、そしてこの疫病だ。…一族にさらなる災いが降りかからぬうちに、こいつを追放せねばなるまい。そうでなければ、取り返しがつかぬことが起きるだろう。そう、追放だ。・・・・われらが問題にしているのは、彼がなにをしたかではない。彼がなんであるか、だ。彼に流れている血が、われらの神を怒られせているのだ。・・・≫

この血筋というアイデンティティーの問題は、サトクリフの多くの作品の底に流れるものです。この現代においても、疫病の出自にこだわり、そこを突き詰めたら、この災いが軽減するかのように思い込む輩がいるのですから、ローマンブリテンとしては、よくある話だったと思います。

 サトクリフの他のローマンブリテン4部作(猪熊葉子訳 岩波)に比べると、追放された少年ベリックの過酷すぎる運命や、登場人物が多く、人物構成が複雑だと感じるかもしれないものの、物語りの最後は、サトクリフの多くの作品同様、向こうに光が・・・・という結末が待っています。(続く)

「ケルトとローマの息子」(1955年)
ローマンブリテン4部作:(岩波)
「第九軍団のワシ」(1954年)
「銀の枝」(1957年)
「ともしびをかかげて」(1959年)
「辺境のオオカミ」(1980年)
☆写真は、英国 オックスフォード近郊

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