

(承前)
ピーター・ラビットシリーズ➡➡ ⇒⇒のような小型絵本ではなく、お話も長い挿絵本「妖精のキャラバン」(ビアトリクス・ポター文・絵 久野暁子訳 福音館)にも、たくさんのネズミさんが出てきます。
毛が伸びすぎたてんじくねずみのタッペニーが主人公です。ネズミ年ということで探した普通のネズミの本が余りに多く、同じネズミ目とはいえ、ヤマアラシ亜目のてんじくねずみさんは後回しにしようとしていたら、「ピーター・ラビットの野帳 フィールドノート」(ビアトリクス・ポター絵 アイリーン・ジェイ メアリー・ノーブル アン・スチーブンソン・ホッブス 文 塩野米松訳 福音館)➡➡にもポターの描いたキノコのスケッチなどと一緒に掲載されているので(上記:写真左)、やっぱりこの際、楽しんでみました。
てんじくねずみといっても、毛が短いのと、毛の長いアビシニアンが、グリーンジンジャーの国のマーマーレードという町に住んでいました。毛の長いアビシニアンの頬ひげに、毛が短いてんじくねずみは憧れています。で、少々、胡散臭い美容研究家が毛が伸びるという新しい特効薬を売り出すと、毛の短いてんじくねずみたちは、歯痛としもやけで悩まされ、短い毛さえも大して生えず、断る勇気もないタッペニーに,一瓶全部、注ぎかけてしまったのです・・・・
で、毛むくじゃらになってしまったタッペニーは町を逃げ出し、牧草地へと。
そこで出会ったのが、キャンプをしている奇妙な一行でした。四輪馬車の幌には「アレクサンダー・ウィリアム・サーカス」、幌の反対側には「コビトゾウ!芸をするぶた!ソールズベリーのやまね!本物の毛長いたち!」とありました。
その一行は、傷心のタッペニーに優しく接し、タッペニーは仲間に入ることに。
「一緒に来るかい、タッペニー。楽しいし、こしょうの実も氷砂糖も、君の分け前をあげるよ。一緒に来て、サーカスの仲間にお入りよ。」みんなが口々に声を上げました。そして、黒ぶたのパディは言います。「今日ここで会えたのは運が良かったね。・・・・」
この部分、ちょっといいでしょう?仲間に入れてもらう・・・仲間になる・・・子どもたちが、求めていることです。
そして、サーカスはいろんな場所に行き、いろんな小動物たちと出会い、いろんな話を聞くのです。そんな中、上記写真左にあるサルノコシカケの左の暗い影に潜んでいるのが、当初、タッペニーに優しい言葉をかけた黒豚のパディです。
行方不明になったパディは、トード・ストゥール Toadstool (Toad:カエル Stool:こしかけ)を食べ、何かにとりつかれたようなのでした。(トード・ストゥール Toadstoolは、毒キノコ一般をさすようです。)ところが、パディが隠れている「ピーター・ラビットの野帳 フィールドノート」の絵のキャプションには、サルノコシカケ Bracket fungiとなっています。調べてみると、さるのこしかけ Bracket fungi (Bracket 張り出し棚 fungi 菌類の複数形)の類は、毒のものはほとんどないとありましたから、毒キノコを食べて、精神状態も混乱をきたしているパディが、逃げ込んだ安全な場所を意味するのが、サルノコシカケだったといえるかもしれません。(続く)
☆写真右 黒豚パディが偽物の鼻をつけ、コビトゾウに扮しています。その頭の上に毛むくじゃらのテンジクネズミのタッペニー

