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ポターの周りの人たち

ヒルトップ12
(承前)
「ビアトリクス・ポター 描き、語り、田園をいつくしんだ人」(ジュディ・テイラー著 吉田新一訳 福音館)
ポターが生涯、出会い、繋がる人々は、子ども時代、作家になる前の時代、作家時代、そして、農場経営時代・・・と年月こそ流れていきますが、階級、国を越えています。
 農場経営時代というのは、彼女の作家としての成功後の、晩年に近い時期からのことですが、ここに長々と書くきっかけとなった、マーガレットレインが「ビアトリクス・ポターの生涯  ピーター・ラビットを生んだ魔法の歳月ー」(猪熊葉子訳 福音館)で書いた、ポターが「辛辣で無礼」という言葉とは、裏腹のポターが見えます。

 例えば、当時は、ポターの住処としてあるいは、作品の舞台となった場所で、空襲を避け、原画をすべて疎開させていた湖水地方ソーリー村ヒルトップの家を、戦争で屋敷を没収された小さな子どものいる親族のために、鍵を渡し明け渡しました。小さな子どもと暮らしたことがある人には、おわかりでしょうが、子どもが家にいることは、家の中がどんなになってしまうか・・・・たとえ、その家族に乳母がついていたとしても。
 ポターは言います。
≪パーカー一家は今、こねこのトムの家にいるのですよ。・・・・子どもたちはとてもかわいらしく・・・・三歳のリチャードは、なかなかのきかん坊です。≫と、彼らのソーリー村滞在を歓迎しています。
 マーガレット・レインのいう「辛辣で無礼」➡➡というのは、どういうことだったんだろう?

 また、第二次世界大戦の戦場とならなかったアメリカのファンや友人からは、食料をつめた小包が届き、ポターも英国の様子を書いて送ったりしています。(ポターは、ヒットラーに憤慨し、当初、ナチスドイツに宥和政策をとったチェンバレンを批判する文を書いています。)
 そして、戦時下にもかかわらず、ポターに何度か会いにきた建設省の建築技師の訪問を歓迎し、その子どもの本にすべてサインするのです。
≪彼は手足の長い、すらりとした、とても背の高い・・・テナガザルみたいな人です。・・・・(中略)・・・・奥さんのミセス・ハートは小柄ではにかみやで、アリソンはかわいいおちびさんです。≫
 と、書かれた おちびさんのアリソンは、サインをしてくれたポターよりもポターの飼っていた犬たちに興味があり(5歳ですからね)、その時の心温まる写真が掲載されています。

 他にも、この「ビアトリクス・ポター 描き、語り、田園をいつくしんだ人」(ジュディ・テイラー著 吉田新一訳 福音館)には、庭師や親族の子どもたちの写真、 ヒルトップに案内したガールガイズ(Girl Guides)と一緒の写真、そして、ポターの遺骨を秘密裡に散骨した農夫のトムが小さく写るヒルトップ前の写真・・・などなど、明るく笑う人たちの写真の数々は、心温まるもので、ポターの人柄さえも伝わってくるものです。

 ポターは、絵本の印税によって湖水地方の土地や農場を手に入れ、保護に努め。死後は、遺言により、それらの土地はナショナル・トラストに寄付されました。他にも慈善事業に関わり―疾病児童援助協会のピーターラビット基金なるものを作っていたようです。(続く)
☆写真は、英国湖水地方 ニアソーリ村(撮影:&Co.I)

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