FC2ブログ
 

みんなみすべくきたすべく

名画と解剖学

サージェントj
 「名画と解剖学」(原島広至 CCCメディアハウス)という本を見ました。副題は、ー『マダムX』には なぜ鎖骨がないのか?-ーです。表紙の絵は、ジョン・シンガー・サージェント➡➡の『マダムX  ピエール・ゴートロー夫人』(1883-4)です➡➡。この夫人の名前は、バージニー・アメリ・アヴェーニョ・ゴートロー。

 確かに鎖骨が描かれていない・・・が、アクセントになっているのが、頭を動かす強力な筋である「胸鎖乳突筋」(らしい)。この本によると、≪「胸鎖乳突筋」は、通常、顔を前に向けた状態では、あまり目立たない。しかし、横を向くと「胸鎖乳突筋」が次第にはっきりと見えてきて、特に胸骨に近い腱の部分は明瞭に浮き出る・・・(後略)≫

 へぇー。・・・とまあ、こんな調子で、有名な絵画や彫塑の骨や頭蓋骨や筋や目や歯、ひいては動物の肢や骨・・・などなどの説明が続きます。ふーん・・・とはなりますが、解剖学や病理など、もっと知りたい人は、さらに調べないといけないかもしれません。
 タイトルだけの時は、美術好きの医療関係者の著作だと思っていたのですが、そうではなく、自らが描き、解剖学の知識が豊富な人の著作です。

 それにしても、世に残る絵画や彫塑は、本当に、骨の髄まで よく見て造形したのだとわかります。無意識に描いたことが、遺伝や、病巣まで読みとろうとすればできるようなのです。

 で、何故、マダムXには、何故鎖骨がないのか?
≪・・・肩を下げ、胸を張って背中で肩甲骨同士を近づけると、鎖骨が胸郭を構成する肋骨に近づくために体表ではあまり目立たなくなる。しかし、肩を上げたり前に出すと鎖骨と胸郭を構成する肋骨が離れるために、鎖骨が見えてくる。つまり、鎖骨を描かないことにより、なめらかな肌を強調しているだけでなく、胸を張って堂々とした姿勢を表現していた可能性がある。≫

 ここで、このモデルの背景に戻ります。この ピエール・ゴートロー夫人バージニー・アメリ・アヴェーニョ・ゴートローは、親子ほど年の離れた富裕なフランス人ピエール・ゴートローの妻で23歳のアメリカ女性でした。また、26歳だったこの絵の画家サージェントもアメリカ人でした。≪華やかなパリで、当時は田舎者とみられていたアメリカ人同士は、彼らを軽んじていた人々の鼻をあかそうと意気込んだに違いない。≫と、解説がありました。
 なるほど、そういう見方ができるんですね、という「名画と解剖学」でした。 

PageTop