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さくら

向こうに桜16
(承前)
「チェリー・イングラムーー日本の桜を救ったイギリス人」(阿部菜穂子 岩波)には、太白桜の他、数々の桜が出てきます。
この本の中では、評価の低い位置づけのソメイヨシノも、個人的には好きです。辺り一帯が、明るく輝いているように見えるからです。また、満開のそれを見上げている人々の表情にも、春が来た喜びが表れているからです。もちろん、一本だけ咲き誇るような山桜でも、喜びの表情で見上げているのは、同じだと思いますが、今や、絶対数の多いソメイヨシノの満開は、春が来たことと、強く結びついています。

 ただ、この絶対数が多い・・・というところに、この筆者は着目し、かつての戦争で「桜イデオロギー」としての象徴ともつなげています。初めは、吉野の桜が江戸でも見ることができる、という発想でしたが、育成しやすいソメイヨシノは、どんどん増えていった経緯、そして、戦争。

 イングラム氏の親族の看護婦だった女性は、日本軍の捕虜だった・・・という過去があります。その過去は、多くを語られなかったものの、のちに取材を受け、その全容がわかります。そして、最後まで。彼女の庭に「桜」が植えられることはなかった・・・
 ・・・これを読んで、情けなかったのは、もちろん日本軍が犯した、愚かな行動のことですが、それよりもっと、残念だったのは、そういう史実や裁判結果など、知らなかったし、学んだ経験もなかったことです。

 が、しかし、その捕虜問題に深い関心を持ち、しかも桜の研究と開発に力を入れた現代の日本人が、「償いの桜」という思いで、計五八種類の松前桜の穂木を贈った話で、この本は終わります。その人物がいいます。
「うわべの親善ではなく、日本人の行った過去の歴史をしっかり踏まえて新しい関係を築かなければ、真の友好は生まれない。」

 戦時下では、日本だけでなく、各地で、蛮行が行われていたという大きなくくりで、知っていたとはいえ、一体、我々は、過去の歴史をしっかり学ぶ姿勢をもっているだろうか。いろんな史実をなかったことと,言っていないだろうか。しかも、声高に。
 桜を見ながら、また一つ、考えなければならないことが増えました。

 それにしても、寒い日の続いた関西のソメイヨシノは、長く我々を楽しませてくれました。また、遅く咲く八重桜と重なって、今年の関西の桜の季節は長い・・・
☆写真上は、神戸 向こうに望むは、大阪湾。
  八重桜

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