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みんなみすべくきたすべく

米の飯を五十年も長く食っていたら、

                         167根津庭園j
  「郷愁の詩人 与謝蕪村」  (萩原朔太郎著 岩波文庫)
≪僕は少し以前まで、芭蕉の俳句が嫌いであった。芭蕉に限らず、一体には俳句というものが嫌いであった。しかし僕も、最近漸く老年近くなってから、東洋風の枯淡趣味というものが解って来た。あるいは少し解りかけて来たように思える。そして同時に、芭蕉などの特殊な妙味も解って来た。昔は芥川君と芭蕉論を闘わし、一も二もなくやっつけてしまったのだが、今では、僕も芭蕉ファンの一人であり、或る点では蕪村よりも好きである。年齢と共に、今後の僕は、益々芭蕉に深くひき込まれて来るような感じがする。日本に生まれて、米の飯を五十年も長く食っていたら、自然にそうなって来るのが本当なのだろう。僕としては何だか寂しいような、悲しいような、やるせなく捨鉢になったような思いがする。≫

 萩原朔太郎(1886~1942)が、1935年に書いた『芭蕉私見』の文頭です。
 ふーむ・・・50歳の頃、こんなこと思ってもみなかった・・・。ま、芥川君をやっつけてしまうような人とは出来が違うけど、米の飯を50年以上ずいぶん長く食っている身としては、今からでも、朔太郎のいうところの“複雑な内容を表現しうる『俳句の如き小詩形』”を、楽しみたいと思います。
 それにしても、この「郷愁の詩人 与謝蕪村」は、読みやすく、しかも深く、ぐいぐい引き込まれる1冊です。新字新仮名も有難い。電車のお伴向きの薄っぺらいのも、うれしい。

☆写真は、根津美術館の庭園

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