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みんなみすべくきたすべく

兄のジャック母さん

       看板j
(承前)
「プチ・ショーズーーある少年の物語」(ドーデ作 原千代海訳 岩波文庫)には、個性的な人たちが登場します。酷い奴らも登場するものの、最終的にはハッピーエンドになるこのお話には、善意の人も多く登場するのです。

誠意溢れる兄のジャック。ジャック母さんとダニエルは呼んでいます。この言い方自体、甘えてる!しかも、最後は、甘えが過ぎて、取り返しがつかないことになるのに・・・・
ダニエルの文学の道を支えてくれた兄のジャック母さんは、こんな人。確かに、お母さんのようです。
≪ジャックが帰ってくると、部屋の様子が一変した。すっかり賑やかに、いきいきとする。僕たちは歌ったり、笑ったり、その日の出来ごとを話し合ったりした。「よく勉強したかい?」と、ジャックが云う。「詩の方ははかどってるかい?」・・(中略)・・・食べずに残してきてくれた、デザートの砂糖菓子をポケットから出す。そして、僕が一生懸命囓じるのを、楽しそうに眺めるのだ。それから、僕は、また仕事机に戻って行って韻をひねった。ジャックは、二・三度部屋の中を歩きまわる。そして、僕がすっかり仕事に没頭しているのを見てとると、こう云って、逃げ出すのだ。「仕事の邪魔をしてはいけないから、ちょっとあそこへ行ってくるよ。」・・・・・≫

それから、ダニエルの人生に大きく関わることになるジェルマーヌ神父。
プチ・ショーズを文学の世界に大きく引き込んだのも、この人。そして、自殺しようとするダニエル助けてくれたのもこの人。そして、うまい具合に終盤にも登場。
ダニエルが思い余って体操場にあった鉄鐶に、ネクタイをかけ首をくくろうとし、世に別れをつげようとする、そのとき、
≪不意に、鉄のような拳骨が彼を見舞う。胴中をつかまれて、腰掛の下に、両足でしゃんと立たされたような気持がする。同時に、聞き覚えのある、ぞんざいで皮肉な声がこう云うのだ。
「ええ考えじゃ、いまじぶん、ぶらんこをやるなんて!」≫

 自伝的色合いの濃い、「プチ・ショーズ」は、ドーデ―の処女作の長編だからか、全体に洗練されている感じではありません。が、しかし、登場人物の何気ない仕草や会話の臨場感は、かえって、身近で、わかりやすいものでした。
☆写真は、スイス シュタイン・アム・ラインの看板

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