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タラスコンみなと

         ロンボク夕日j
「ゴッホの手紙 上中下」 (硲伊之助訳 岩波文庫)
(承前)
 ゴッホは、手紙の中で、何度もドーデ―の「タルタラン」の話について言及するものの、3部作の最後の「タラスコンみなと」についての言及は、見当たりません。この作品は1890年作で、ゴッホは1890年没ですから、読んでいなかったのかもしれません。
 
 それに、この「タラスコンみなと」は他のタルタランシリーズと違って、結末が、タルタランの死と、タルタランの骨ともいうべきタラスコンの地で、彼が亡くなったわけではないという、人生の悲哀を感じさせる終わり方なので、それまでの荒唐無稽ともいえる、タルタランのお話を期待すると、少々、違ったものになるような気がします。
 
 南仏で機嫌よく暮らしていたタラスコンの人たちが、新天地は、さらに素晴らしいと、大海を移住するという話。ま、それだけでも、そんなうまい話あるもんか・・・と、思いながら読み、ほら、やっぱり、言わんこっちゃない、新天地は楽園じゃなかったやん!
 それだけなら、よくありそうな話ですが、それが連れ戻され・・・・結果、タルタランの人生の最後は、ちょっと寂しものに・・・

 だから、ゴッホが、生前、この本の出版に間に合わず、読めなかったとしたら、それはそれで、よかったような気がします。
 また、もし、生前、読んでいたとしても、芸術家たちの理想の暮らしをアルルに求め、ゴーギャンとの暮らしが、短期間で頓挫したゴッホにとっては、大きな皮肉とも取れ、タルタランの大きな夢に向かっていく様子が好みだったことを考えると、この本を、弟に紹介しなかったようにも取れます。

 それに、南洋に新天地を求め頓挫したタルタラン、南洋に新天地を求め成功につなげたゴーギャン。フィクションと事実とはいえ、大きな接点がここにあって、興味深い。(続く)
*「アルプスのタルタラン」(畠中敏郎訳 岩波文庫)➡➡
*「陽気なタルタラン」(小川泰一訳 岩波文庫)➡➡
*「タラスコンみなと」(畠中敏郎訳 岩波文庫)

☆写真は、インドネシア ロンボク島の夕陽(撮影・&Ak)

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