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みんなみすべくきたすべく

こいつら日本人ときたら

ししおどしj
(承前)
 「片隅の人生」(サマセット・モーム 天野隆司訳 ちくま文庫)

 この話は、眼科医サンダースを通して見た、南洋での人間模様が描かれていて、移動の船内が舞台のこともあります。
 話の始まりと、終盤は面白く読めるのですが、どうも、中盤は、ぴりっとしない気がして、途中で読むのをやめそうになっていました。
 そんな中、イギリス人の船で日本人の潜水夫が死ぬという箇所があって、へぇー、ステレオタイプの日本人像というのは、こういうことなのかと思った次第です。

 サンダース医師は、日本人潜水夫が悪性の赤痢に罹っていると診断します。すると、船長が「ちくしょう、こいつら日本人ときたら、まったく体力に欠けていやがる。・・・」

 結果、日本人潜水夫は亡くなり、イギリス式の葬式を船上で執り行います。そのとき、サンダース医師が思い描いたのが、
≪・・・この潜水夫も昔は小さい子どもだったと思った。黄色い顔に黒玉の眼を光らせて、日本のどこかの町の通りで遊んでいただろう。きれいな着物を着て、母親に手をひかれて、桜の花を見に行ったり、神社やお寺へお参りに行ったりしただろう。そんなときの母親は晴れ姿が美しく、入念にゆった髷にかんざしが刺され、からころ下駄の音をたてて歩いただろう。お参りの神社やお寺ではお祝いの餅をもらったことだろう。真っ白い着物に身をつつみ、灰色の杖をついて、家族とともに巡礼の旅に出て霊峰富士の頂から昇りくる朝日の姿をながめたかもしれない。≫
 作品は1932年。その頃、日本は、昭和7年。
 この作品がフランス語や他英語以外に翻訳されているとしたら、この箇所、どんなふうに訳されているか、興味のあるところです。(続く)
☆写真は、京都 詩仙堂の鹿威し(鹿威し 発祥の地)

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