FC2ブログ
 

みんなみすべくきたすべく

その歌声は天にあふれる

グロースターてんじょうj
(承前)
「その歌声は天にあふれる」(ジャミラ・ガヴィン 野の水生訳 徳間書店)
 この本は、児童書というより、もう少し大きい人たちを対象にした本だと考えます。
 というのは、18世紀英国の望まれない出生の子どもたちを、大人たちがどう扱ってきたか。あるいは、登場人物も多く、身分や家柄など、当時の英国の背景が複雑に描かれているからです。
 また、その人物たちの背負うものの大きさは、簡単に子どもたちが理解できるほど、単純なものでないということもあります。
 それに、物語の構成に少し無理を感じるところがないわけでもありません。

 が、しかし、児童よりもう少し大きくなった人たちには、読んでほしい一冊であることは確かです。
グロースターかべj
 
 フィクションでありながら、実在のロンドン「コーラム養育院」が出てくるし、音楽家のヘンデルも登場、グロースター大聖堂の聖歌隊、また場所はグロースターでありコッツウォルズでありロンドンである、そんな史実を織り交ぜながら、18世紀の英国のその場所、その子どもたちが、目の前でいるかのように生き生きと表現されています。
 作者があとがきで言うように、作者が愛する音楽と子どもたちが、ごく自然な形で結び付いていった一冊なのです。

        グロースター天井高いj

 かつて、カ・リ・リ・ロ自身が英国ウィンチェスターの大聖堂で、イースターのオラトリオを体験した時、あるいは、アイルランドの朝の教会で、子どもたちが(ボーイソプラノたちが)、聖歌の練習をしているのに出くわした時、あるいは、パリの教会で、パイプオルガンの練習をしているところに入った時など、数少ない教会音楽体験からしても、あの空間で、音楽が聴こえる=天からあふれる・・・そのものなのです。
 このような不信心者でさえ、浄化されていくようなひとときを過ごすことができました。

 「その歌声は天にあふれる」の原題は”CoramBoy”(コーラム養育院の男の子といった意味でしょうか?)です。
 が、この本に登場する何人かの人物を思い浮かべるなら、この邦題「その歌声は天にあふれる」は、もしかしたら、原題よりいいタイトルかもしれません。これなら、英国の当時の複雑な時代背景の理解が少なくても、本を手に取りやすいし、また、物語では、救われなかった人物たちにとっても、一縷の光が差し込んでいるような気がするからです。
☆写真は、すべて 英国 グロースター大聖堂➡➡ ⇒⇒ 

グロースターステンドグラスj

PageTop