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みんなみすべくきたすべく

まるでおいしいお菓子でも食べるように読みふけり

ボストン庭
(承前)
 「花々の流れる河」 【「黄金の時刻(とき)の滴り」 (辻邦生 講談社文芸文庫)収録】の中で、一番、印象的だったのは、ヴァージニア・ウルフのことではなく、子どもの頃から詩人や小説家になりたかった花屋の店員さんが、子どもの頃読んだという本のことでした。

≪…実は、亡くなった母が、大変詩の好きな人で、好きな詩を選んでは、革表紙のノートに、それを書き写していて、幼い頃から、その母の形見のノートが唯一の宝で、それこそ中の詩全部をそらで覚えるほど、繰り返し読んでいたからでした。
 そこにはシェイクスピアのソネットから、ブレイク、ワーズワス、シェリー、キーツ、ブラウニングなどの美しい詩が書き写されていて、なかでも子供の私は、スティーヴンソンのA Child's Garden of Versesがとても気に入っておりました。・・・・・・(中略)・・・・
 ・・・・母のこのノートのおかげで、私は早くから、小説ならエドワード・リアやブロンテ姉妹、童話ならルイス・キャロルに夢中になる詩好きな風変りな少女になっていたのでした。・・・・・(中略)・・・・学校が休みになる復活祭の頃、机の傍にスコットやスティーヴンソンやジョージ・エリオットを積んで、まるでおいしいお菓子でも食べるようにそれらを読みふけり、朝から晩まで、寂しい古城や、騎士たちの甲冑のきらめきや、月光のなかの恋人や、悠然としたこの世の眺めに取り囲まれていた日々の幸せを今も忘れることができません。…≫

 これは、誰の読書経験につながる描写なのでしょうか。ヴァージニア・ウルフ?それとも、辻邦生?あるいは、まったくのフィクションからでてきた実名の作家たち?

 ともかくも、スティーヴンソンのA Child's Garden of Versesが出てきたのは、嬉しいことでした。
*「ある子どもの詩の庭で」A Child's Garden of Verses  (ロバート・ルイス・スティーヴンソン詩 イーヴ・ガーネット挿絵 まさきるりこ訳 瑞雲舎)
☆写真は、英国 ヘミングフォード村 ルーシー・ボストンのマナーハウスの庭

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