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花々の流れる河

テムズ13j
(「青空の彼方へ」から続き)
(承前) 「黄金の時刻の滴り」(辻邦生 講談社文芸文庫)の中で、ヴァージニア・ウルフと思われる女性が描かれているのは、「花々の流れる河」でした。
 このタイトルからして、オフィーリアが川を流れていく.ミレイの絵を思い出します。実際にヴァージニア・ウルフは、自宅そばのウーズ川に身を投げました。
 
 辻邦生の書く「花々の流れる河」の前半に登場するブルームズベリー地区は、ヴァージニア・ウルフたちのブルームズベリー・グループの集まっていたところですが、今も落ちついた雰囲気の地区で大英博物館に隣接し、話の中に出てくるゴードン・スクエなどにはロンドン大学やカレッジなどがあります。つまり、ウルフの頃から、知的な人たちが集まってくる地域でした。

 後半はヴァージニア・ウルフの「灯台へ」(御輿 哲也訳 岩波文庫)の舞台になったコーンウォールに話を移します
 
 この「花々の流れる河」という短編は、ウルフの揺れ動き続ける心理状態を、描いたものなので、「黄金の時刻の滴り」の中でもひときわ、観念的な作品だったように思います。

 「作家の批評 辻邦夫」という文章の中で、丸谷才一のいう≪・・・いつも、筋に綾をつけたり、小道具の扱い方を工夫したり、風景描写に苦心したりしている、しかもそのくせ観念的・形而上学的な志向の強い・・・≫というような箇所もあるにはあるのですが、個人的は、そこが好きだったりします。

≪私はあの方の小説を読み、その美しさに茫然としました。花屋のショーウィンドーのなかに座っていて、あの方の小説を思い出すと、そこに並ぶ薔薇やあらせいとうや金魚草やグラジオラスなどが幅広い河となって織物のように流れていくような気がしました。私はほかの小説に較べて、あの方の作品では、この現実の輪郭が薄れ、やがて溶けてゆき、青や紫や緑の色斑のやわらかな渦となって、人生そのものが解体されてゆくような感じを受けました。≫  
*注:あの方:ヴァージニア・ウルフと思しき小説家。私:詩や小説の作品を書きたい花屋の女性。(続く)
☆写真は、英国 オックスフォード付近の運河

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