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みんなみすべくきたすべく

幻視的短編

ノートルダム2j
「海辺の悲劇 他三篇」(バルザック 水野亮訳 岩波文庫)
 この文庫本も電車用に薄い本です。
 訳者の好みでは、最初の「グランド・ブルテーシュ奇譚ーー醫師オラース・ピアンションの物語れるーー」は、バルザックの二十幾篇かの短編の中で一番愛している作品だそうです。≪題材がロマンチックで面白いし、出来栄えがまた、まず完璧に近い名作という気がする≫と解説に書かれておりました。

 また≪作者は、この悲劇の大詰めの効果を高めるために、どれほど注意深い書き方をしているかがよくわかる≫と、前半のテンポと後半一気呵成に進み行く展開のことを指し、この短編の出来を解説しています。
 確かに、ゆるゆる進む前半の印象より、最後のあっと言わせる結末に向かう展開の印象は強烈です。うっそー!って感じでしょうか。幻視的短編と位置付けているようですが、幻視というより、ちょい怖いミステリーという感じです。

 ということで、読み物としては、この一番初めの「グランド・ブルテーシュ奇譚」が面白いのですが、「フランドルの基督」という中に、こんな言葉が、ありました。
≪自然の眺めのなかには、それを詩にしてみても絵にしてみても、実際にそれが続いた時間以上には恐らく引き伸ばし得ないものがある。≫
 何か、わかる気がします。自然の中に立つと、その空気を味わう、嗅ぐ、まとう、耳にする、目にする・・・の時間。
 詩的でも、美的でもないものの、心の平安が、そこにある。
 作者の言った事とずれているかもしれないけれど、自然を眺める「時間」が好きです。
☆写真は、パリ ノートルダム寺院ですが、暗すぎてうまく撮れていません。

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