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みんなみすべくきたすべく

作者不明

        グラスj
「ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯」(会田由訳 岩波文庫)
 この薄っぺらい文庫本の作者は一体だれか、不明です。
 ヨーロッパでピカレスク小説を流行らせるさきがけとなった傑作、とあります。ピカレスク小説というのは16~17世紀にスペインを中心として流行した悪漢小説・悪者小説の類です。
 解説によると、スペイン文学の特色を発揮することになる悪者小説という目新しい形式の読み物ということらしい。貧しい下層階級出の男が、次々に主人に仕えてなめる苦労を、自伝体で述べるという形式なのです。

 今読むと、差別的な表現が多々ありますが、筋立てはわかりやすい。
  訳者解説では、この話を「別に入り組んだ筋立て一つもない」「作品全体の構成も、決して均斉がとれているわけでもない」「文章も正確とは言えない」と言います。が、主人公のラサーロはバイタリティにとんだ、憎めない悪童として描かれ、読者を魅了し続けてきたようです。

 ラサーロが、ひもじくてひもじくて、知恵を働かせ、木箱からパンをくすねるところがあります。初めは、犯人は、ネズミかもしれず、次は蛇かもしれないと言われます。そんなとき、
≪…彼が夢中になって、眠ろうともしないので、まったくの話が、蛇は、いやもっと正確にいえば、わたくしという頭の黒い蛇は、夜になってかじるどころか、木箱のところへ立ち上がることすら出来にくかったのでございます。しかし昼間・・・・≫

 そう、そう、頭の黒い蛇やネズミ!今もいるいる・・・

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