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みんなみすべくきたすべく

侘しい夜が続く十二月に

イルミネーションj
夏の岩波文庫新刊に「キーツ詩集」(中村健二訳)がありました。復刊でも増版でもありません。

 なんだか、真夏に読む気がしなくて、晩秋に手に取ると、こんな出だしが心に残りました。
≪ああ、幸せな、幸せな枝よ!きみたちが葉を 落とすことはないし、春に別れを告げることもない。≫

きみたち・・・すなわち、常緑樹・・・・・・・モミの木、でしょう?と、イメージが膨らみました。

一言も、特定することなく、広がっていく詩の面白さを感じます。ともかく、カ・リ・リ・ロは、モミの木が浮かびました。

それで、詩集後半に、
「侘しい夜が続く十二月に」というタイトルの詩があって、
≪侘しい夜が続く十二月に
 幸せすぎるほど幸せな木よ、
 緑に包まれた至福の時を、
 おまえの枝が思い出すことはない。
 霙(みぞれ)まじりの北風がひゅうひゅうと鳴り、
 枝の葉を散らすことはないし、
 春に枝が凍りついて
 芽吹かないこともありえない。・・・・・(後略)≫

 現代の日本、しかも都市部で、侘しい十二月というイメージは広がりにくいものの、心寂しい十二月ということもあり得るでしょう。そんなとき、一本の木を思い浮かべ、今は侘しい十二月でも、春には芽吹かないこともありえないという詩を一つ読むだけで、心和む十二月に。
☆写真は、東京上野公園

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