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みんなみすべくきたすべく

然も隅から隅まで歩き廻る

オックスフォードハートフォードブリッジ
「大人に贈る子どもの文学」 (猪熊葉子 岩波書店)
(承前)
 翻訳について興味深いことが書かれていました。しかも、堀口大學の言葉が引用されています。
≪原書は翻訳者にとっては、一面の陥穽(かんせい)以外の何ものでもない。彼はその中を抜き足、さし足、然も隅から隅まで歩き廻らねばならないのだ。≫
 
その言葉をついで、猪熊葉子は続けます。
≪不注意な透明人間はたちまち陥穽に落ち込みます。これが読むことのはじまりですが、翻訳者にはさらに読者よりも大切なことが要求されるのです。それは翻訳者が自分のもっている好奇心、想像力、空想力、五感や知性、感情などを働かせてその世界に「生きられる」かどうかです。翻訳者が「読み」得たものを日本語によって過不足なく表現することが可能になるかどうかは、それが実行できるか否かにかかっているといえるでしょう。・・・・(中略)・・・・子どものための作品の翻訳者は、子ども=大人としての二重性をもって作中世界を探索する必要があるのです。自分は子どもが好きだからと、大人の部分を棚上げにして、子ども還りをしていてはだめでしょう。≫

 この翻訳考は、まだ続くのですが、
 最後のところ、「大人を棚上げにして」という言葉は、絵本という分野にも見られます。
大人を棚上げにした、子どもに媚びた絵本も多く、あるいは、子どもは、甘いもの、カラフルなものだけが好きなはずという大人の勝手な目線の絵本も少なくありません。大人が、子ども心を具えることと、大人でありながら、子どもっぽい子ども還りは別だということだと思います。(続く)

☆猪熊葉子さんが留学していたのは、オックスフォード マートンカレッジですが、写真は、オックスフォード ハートフォードブリッジ

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