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みんなみすべくきたすべく

上品でアーティスティックで、ありきたりだ

                モリス絨毯j
(承前)
  「月と6ペンス」は、ゴーギャンの絵を思い浮かべたりするものの、結局は、似て非なる(ような)画家の世界でした。ゾラの「制作」も画家セザンヌの世界でしたが、これは、フランス人ゾラによるフランスの世界で、「月と6ペンス」はイギリス人モームによる、フランス風の世界という違いを感じました。

 特に、イギリス臭のするのは、ロンドンの部屋の設えの表現です。パリの部屋については、こうも詳しく書いていませんから。
≪ダイニングルームのインテリアは、当時の流行を取り入れた趣味のいいものだった。質素なしつらえで、高めの白い腰羽目板に、緑の壁紙。壁にはホイッスラーのエッチングが何枚か、しゃれた黒い額縁におさまってかかっている。何枚も連なっている緑のカーテンは、クジャク柄で、緑の絨毯は、生い茂る木々のあいだを跳ね回る白ウサギの模様。どちらもウィリアム・モリス風。炉棚には青いデルフト陶器が置かれていた。当時のロンドンには、これとまったく同じインテリアのダイニングルームが五百はあったにちがいない。上品でアーティスティックで、ありきたりだ。≫
 写真に使ったのは、現代のロンドンのホテルのリビングですが、日本人から見ると、≪上品でアーティスティックで、ありきたりだ≫という感覚ではないような・・・(このホテルの他の写真→→→① →→→②
 
 さて、「月と6ペンス」には、時々、実際の画家や、その評価、あるいは絵画論も出てくるわけですが、善人の代表みたいなストルーヴェという画家にこんなことを言わせます。
≪美とは、芸術家が世界の混沌から魂を傷だらけにして作り出す素晴らしいなにか、常人がみたこともないなにかなんだ。美を理解するには、芸術家と同じように、魂を傷つけ、世界の混沌をみつめなくてはならない。たとえるなら、美とは芸術家が鑑賞者たちに聴かせる歌のようなものだ。その歌を心で聴くには、知識と感受性と想像力がなくてはならない≫
 ふーむ、深いなぁ。

*「月と6ペンス」(サマセット・モーム 金原瑞人訳 新潮文庫 行方昭夫訳 岩波文庫)
*「制作」上下 (エミール・ゾラ 清水正和訳 図版あり 岩波文庫)

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