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ドリアン・グレイの肖像

              肖像画j
(承前)
 ワイルドを読み返すきっかけになった「カンタヴィルの幽霊・スフィンクス」(南條竹則訳 光文社古典新訳文庫)に入っていた「模範的億万長者ー感嘆符ー」は、肖像画にまつわる小編でした。そして、ワイルド唯一の長篇小説「ドリアン・グレイの肖像」(福田恒存訳 新潮文庫)も、肖像画という共通点。
  とはいえ、この2作品は、嘘みたいなハッピーエンドと、おぞましい筋立て・結末という、ずいぶん違う肖像画の話なのです。

  アイルランドからロンドンに出てきたワイルドは、肖像画家フランク・マイルズと貸家をシェアし、そこに多数の著名人が顧客として訪れ、そこから華麗な人脈を築いたようです。肖像画が生活の間近にあったわけですから、そこから生まれた作品とも言えましょう。この作品が書かれたのは、ワイルドが社交界でもてはやされ、様々なことが順風に乗り、傲慢な空気がワイルドの周りに漂っていた頃ですが、後に、裁判にまで引っ張り出される作品になろうとは、ワイルド自身、予想だにしなかったでしょう。

  美貌の青年ドリアンは、自分が描かれた肖像画を見て呟きます。
≪「悲しいことだ!やがてぼくは年をとって醜悪な姿になる。ところが、この絵はいつまでも若さを失わない。・・・(略)・・・ああ、もしこれが反対だったなら!いつまでも若さを失わずにいるのがぼく自身で、老いこんでいくのがこの絵だったなら!そうなるものなら―――そうなるものなら―――ぼくはどんな代償でも惜しまない。この世にあるどんなものだって惜しくない。そのためなら、魂だってくれてやる!」≫
     ・・・・と、その願いは現実になるというのが「ドリアン・グレイの肖像」なのです。(続く)

*「ドリアン・グレイの肖像」(福田恒存訳 新潮文庫)
*「オスカー・ワイルド〈犯罪者〉にして芸術家」 宮崎かすみ著 中公新書)
☆写真は、スイス オーバーホーヘン城

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