FC2ブログ
 

みんなみすべくきたすべく

わたしが外人だったころ

ささきまきj
 「わたしが外人だったころ」 (鶴見俊輔文 佐々木マキ絵 福音館)
 哲学者鶴見俊輔氏の訃報。
 ・・・といっても、この人の思想の多くを知っているわけではありません。
 が、今、手元に取り出したのは一冊の絵本 「わたしが外人だったころ」。

 16歳の著者がアメリカ合衆国に渡り、ハーヴァードに入り、入学三年目に戦争が始まり、卒業式の日に交換船に乗って帰国。2か月半の航海を終え横浜に。その後、徴兵検査。海軍では、英語力を生かし「敵側で読んでいる新聞に近い新聞を作れ」という命令を受けたり、病気がひどくなったり、何度も船を乗り換えて帰国。空襲、敗戦。
 感情に流されることなく、一方に肩入れすることなく、時にユーモアを交えながら、青年時代のことを書き綴っています。

 開戦を著者に知らせてくれたのは、アメリカでの友人でした。
 その友人が言います。
≪「戦争がはじまった。これから憎しみあうことになると思う。しかし、それをこえて、わたしたちのつながりが生きことを祈る」≫
 ところが、日本に戻った著者は、アメリカを憎むことができず、自分が撃沈か空襲で死ぬとしても、憎むことはないだろうと思うのです。

 この本は、起承転結のあるお話ではありません。また、明確な答えが書かれているわけではありません。青年の目を通して見た、戦争前後のアメリカでの暮らし、その後の暮らしが、平易な言葉で淡々と綴られています。
 が、静かに伝わります。「人と人とのつながり」の持つ意味、「外人」という言葉が持つ意味。福音館たくさんのふしぎシリーズの一冊として出た哲学書です。

 この本は、今こそ、誤った方向しか見えていない権力欲に侵されている人に届けて欲しい一冊です。漢字も難しくないし、言い回しも難しくないので、その人たちにも読めるはず。

PageTop