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島とクジラと女をめぐる断片

イルカj
(承前)
 須賀敦子訳のタブッキを次々読んでいったのですが、「島とクジラと女をめぐる断片」(タブッキ著 須賀敦子訳 青土社)は、短篇というより、タイトルにあるように、断片集です。クジラとアソーレス諸島につながる作者の習作のような感じで、ついていけないものも多かったです。
 
が、最後の「ピム港の女」は、詩的な空気が漂う佳品でした。もちろん、短篇です。タイトルは「ウツボの唄」じゃダメなんでしょうけど、歌の部分はキーワードです。
≪ウツボを釣るのは月が満ちてくる時期の日が暮れてからで、魚を呼びよせる言葉のない歌があった。最初は声を低くしてゆっくり、そしてふいに激しく歌いあげる。まじめな歌だ。あれほど、せつない感じの歌は聞いたことがないよ。まるで海の底からたちのぼってくる、というのか、さまよう霊がうたっているような。≫

 そして、最後に作者自身のあとがきとして、「一頭のクジラが人間を眺めて」というこれも詩的な短文があります。
 その最後の最後、クジラが人間を見て、
≪彼らはときにうたうことがあるが、じぶんのためにだけだ。そして、彼らの歌は呼びかけではなくて、胸を刺すような哀しみの呻きに似ている。彼らはすぐに疲れる。日が暮れると、彼らを運んできた小さな島のうえで休息するのだが、たぶん眠りこけているのか、さもなければ月をみているのだろう。音も立てずに、彼らは去る。やっぱり、彼らは悲しいにちがいない。≫(続く)

☆写真は、バリ島沖、イルカウォッチングの写真(撮影:&Co.Ak)
     
     ふねうしろj

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