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みんなみすべくきたすべく

手には三つの百合の花

             あまつおとめj
(夢の続き)(承前)
 以前書いた「夢十夜」第一夜とロセッティの絵画(「マリアの少女時代」「受胎告知」)の関係は、百合の花のイメージを中心に、感想を書きました。が、しかし、「D.G.ロセッティ作品集」に掲載されている「天つ乙女」という長詩は、漱石「夢十夜」の第一夜のイメージにもっと近いことがわかりました。

 まず、ロセッティ「天つ乙女」の初め
≪天つ乙女はのりいだす、
 天なる国の黄金(こがね)の高欄から。
 その眼(まみ)は夕べに静まる
 海の深みより深く、
 手には三つの百合の花、
 髪を飾るは七つ星。・・・・・・≫

 そして、漱石「夢十夜第一夜」最後≪自分は苔の上に座った。これから百年の間こうして待っているんだなと考えながら、腕組みをして、丸い墓石を眺めていた。≫
≪・・・すると石の下から斜(はす)に自分の方へ向いて青い茎が伸びて来た。見る間に長くなってちょうど自分の胸のあたりまで来て留まった。と思うと、すらりと揺ぐ茎の頂(いただき)に、心持首を傾けていた細長い一輪の蕾が、ふっくらと弁(はなびら)を開いた。真白な百合が鼻の先で骨に徹える(こたえる)ほど匂った。そこへ遥(はるか)の上から、ぽたりと露が落ちたので、花は自分の重みでふらふらと動いた。自分は首を前へ出して冷たい露の滴る(したたる)、白い花弁(はなびら)に接吻した。自分が百合から顔を話す拍子に思わず、遠い空を見たら、暁(あかつき)の星がたった一つ瞬いて(またたいて)いた。「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気がついた。≫

・・・・この最後の部分は、前も引用しましたが、以前は、百合の花に気を取られていました。
 が、しかし、絵画の「天つ乙女」(上の写真)を見ると、絵の下に、寝そべって(苔の上?)考えている風情の男の人がいるし、上方には「夢十夜」で≪天から落ちてくる星の破片(かけ)を墓標(はかじるし)に置いてください。≫といった女の人がいるのです。(夢は続く)

*「D.G.ロセッティ作品集」(南條竹則・松村伸一編訳 岩波文庫)
☆写真は、Rossetti (David Rodgers)PHAIDON社刊の「天つ乙女(あまつおとめ)」(The Blessd Damozel:「祝福されし乙女」と訳されている場合もあります。)

☆★☆この絵の習作は、かつて東京ブリジストン美術館「ドビュッシー 音楽と美術」展にあり、ドビュッシーが、ロセッティの「祝福されし乙女」(天つ乙女)の詩に影響を受け、作曲したのが「選ばれし乙女」という展示でした。・・・このドビュッシー展のことは、沼辺信一氏の「私たちは20世紀に生まれた」に熱く書かれていますので、ぜひそちらを()。

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