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みんなみすべくきたすべく

美しい一節で心が落ち着いた

もみのき13
(承前)
 高校国語の文学問題➡➡と繋がってると、勝手に考えていることを、もう少し、書きます。

 この件を書こうと思ったときに、たまたま読んでいた本が「とんがりモミの木の郷  他五編」(セアラ・オーン・ジュエット作 河島弘美訳 岩波文庫)でした。

 その短篇集は、息を飲むような展開のものでなく、またロマンスでもありません。日常を描いているものでした。そして、そこには、知恵のある暮らしや、幸せのひとときが、書かれています。

 訳者あとがきによると、≪日本で、ジュエットの知名度が低いのは、これまで邦訳や研究が少なかったためであろう。その一方で、大学用のアメリカ文学の教科書には「ローカル・カラー文学の担い手」の一人として必ずと言ってよいほど取り上げられ、文学史上の重要性は認められている。≫
 また、≪ジュエットの作品の楽しさを、率直な善意と好意あふれる「癒やし系」であること≫とし、≪現代の読者に元気を与える小説である≫と、しています。

 加えて≪・・・ジュエットの主な関心は、プロットよりも、それぞれの人生経験を積んだ人物たちと生き方と言動に向けられている。・・・・(中略)・・・ 一見すると何でもない日常を描いた小説でありながら読む者の心に余韻を残すのは、その力のゆえである。・・・・(中略)…過去あるいは未来を巧みに現在と響きあわせるジュエットの小説には、これこそ読書の醍醐味だとおもわせるものがある。≫

・・・ということで、「とんがりモミの木の郷」の話の前半に、こんな箇所がありました。

≪リトルペイジ船長は、物思いにふけった。「そしてわたしには、読書という宝がありました」と、船長は間もなく話し始めた。「本は一冊も持っていませんでした。牧師は英語を少しだけしか話せなかったし、持っている本は全部外国語でした。しかし、思い出せる限りの文を暗唱したものです。昔の詩人たちは、自分らの作品が後世の人間にとってどんな慰めになるものか、思いもよらなかったでしょうなあ。わたしはミルトンの作品を熟知していましたが、あそこにいた頃はシェイクスピアこそ最高だと思えましたよ。航海用語が正確だったし、美しい一節で心が落ち着いた。繰り返し暗唱して涙を流したものです。頭上に輝く星と、あの詩ーーあそこでのわたしには、それだけが美しいものでした。≫(続く)
☆写真は、スイス アルメントフーベル

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