「黒い兄弟ージョルジョの長い旅」(リザ・テツナー作 酒寄進一訳 福武書店)
(承前)
ジョルジョは、川でマスを捕まえる技を身につけただけでなく、山でたくさんの生物たちと出会っています。たとえ、山奥の限られた人たちの中で育とうとも、生命あるものとの多くの交わりは、ジョルジョの生命あるものへの思いやり、友人への思いやり、人への思いやり、やがては、村の未来への思いにつながっていきます。
≪のぼり道は、はじめの百メートルほどがいちばんけわしく、トチの木や岩につかまりながらよじのぼります。しかしそこをすぎると、山道はなだらかになり、野原もみられるようになります。けれども、山の野原といっても、見えるのは灰色や黄色の山肌ばかりで、やぶの木々は枯れはて、木の葉一枚ありませんでした。それでも、ジョルジョとアニタは嬉々として、とびはねながら山をのぼりました。そして途中でトカゲやヘビを追いかけたたり、大きなチョウのあとを追ったり、森の中からでてきたカササギやキジの帰り道をふさいだり、コオロギをつかまえたり、アリの行列についていったりしました。
二、三百メートルほどのぼったところには、すばしっこいマーモットの巣がありました。マーモットはいつも、穴の中から棒立ちになってあたりをうかがっています。そっと近づけば、マーモットが穴に逃げこむときに、頭やもこもこした小さな尻尾をなんとか見ることができました。
それから、カモシカが遠くに姿を見せることもありました。それはカモシカの親子で、子どもたちは子ヤギのようにたがいに角をぶつけあってけんかをしていました。≫

☆写真上は、クライネシャイデック エリンギウム・アルピウムにとまるチョウチョ(クライドルフの絵本➡➡)
写真下のマーモットは、アルプスの山で時々見かけることのある動物ですが(リス科)、上記、引用したように、動きが早く、遠くに居るので、なかなか写真に残せません。今回、写真に使ったのは、モントルーからケーブルで登って行ったロシュドネーで飼育されていたマーモット。
「黒い兄弟ージョルジョの長い旅」(リザ・テツナー作 酒寄進一訳 福武書店)
ある晩、娘と父親が、中世の話をしていたとき、「ハーメルンの笛吹き」の話になりました。娘は、ケート・グリーナウェイの絵本
「ハメルンの笛吹き」*の話をし、父親は阿部謹也の「ハーメルンの笛吹男」*の話をしていました。そんなとき、それって、中世の人身売買につながっている話だとしたら、時代はちがうものの、「黒い兄弟」もそうやった・・・と、かつて、娘が何度も何度もくり返し読んでいた本の話題になりました。そうそう、あれって、つらい話やけど、なんか、明るい話やった。希望のある話やった。舞台は、スイスからイタリアに行く話やったよね?
ん?スイスから、イタリア?
かつて、カ・リ・リ・ロ自身も、「黒い兄弟」も読んでいたのに…しかも、イタリア・スイスの逃避行の話だと覚えていたものの、ん?イタリア・スイス?昨年のスイス旅行もその辺りだった?
と、いうことで、娘とその父親とカ・リ・リ・ロの3人で、「黒い兄弟」を引っ張り出し、そこに出ている絵地図を参照しながら、グーグルマップ航空写真で検証しました。
おお、それは、まさしく、昨年行ったところと今年行こうとしているところ。
そこで、読み返しました。そして、今度は、その舞台の一部に行ってきます。
・・・ということで、拙ブログしばらく、休みます。
*「ハメルンの笛ふき」(ロバート・ブラウニング詩 ケート・グリーナウェイ絵 矢川澄子訳 文化出版局)
***「対訳 ブラウニング詩集」(富士川義之編 岩波文庫)➡➡にも、「ハーメルンの笛吹き男」の詩が掲載されています。
*「ハーメルンの笛ふき」(サラ&ステファン・コリン文 エロール・ル・カイン 金関寿夫訳 ほるぷ)
*「ハーメルンの笛ふき男」(ロバート・ブラウニング作 ロジャー・デユボアザン絵 長田弘訳 童話館出版)
*「ハーメルンの笛吹き男 - 伝説とその世界」(阿部謹也 平凡社 ちくま文庫)
☆ 写真は、「黒い兄弟」の上に、その舞台Sonogno(Ticino地方) の絵葉書を置いています。この絵葉書は、十数年前に、この辺りに行かれた方から、いただきました。実は、同じ方から、「のんびりしたいいところよ」という、近辺の絵葉書をもう一枚いただいているので、今回、そちらにも、行ってこようと思っています。