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みんなみすべくきたすべく

見る人次第で

りすj
(承前)
 ➡➡ジェフリー・アーチャーの短編に、「九匹の猫の話」があり、今年は「猫」の絵本を紹介しているので、読んでみました。が、原題がCat O’Nine Talesというだけで、猫が出てくる作品集ではありませんでした。
 短篇集「嘘ばっかり」が面白く、その勢いで読んだ「15のわけありの話」が、策略ばっかりで、段々飽きてきたので、この邦題「プリズン・ストーリーズ」(ジェフリー・アーチャー 永井淳訳 新潮文庫)にも、さほど期待ができませんでした。何しろ「刑務所の話」なのですから。悪事と関係しているだろうし、実際、作者本人が、刑務所生活で出会った犯罪者から聞いた話を基にできているからです。

 臨場感あふれる(実話をもとにしたフィクション)展開は、興味深く、一気に読めます。が、個人的には「ああ、よかった」「ちょっと、いいかも」の結末が好みですから、狡猾な背景と結末には、すっきりした気分で読了できないことが多い。

 そんな中、最後の一編「あばたもエクボ」は、ちょっと、いい感じで終わりました。
 ただし、この邦題はちょっと違うような気がします。原題は、≪In The Eye of the Beholder≫です。辞書には、≪見る人次第で 見る人によって≫とありました。意訳すると、「あばたもエクボ」と言えなくもないけれど、一体、主人公の一人パオロは、妻のアンジェリーナの体重の多さを あばたと見ていたんだろうか。
 その言葉には、「他の人からは、あばたにしか見えないんだよ。それって。」という意味が見えます。確かに、話の中では、酷い差別意識で、彼女の体重の多さを、あばたとしか見ない人達のことが描かれ、後味悪い部分もあるのはあるのですが、それを消してしまうくらいのちょっといい結末から考えると、やっぱり、「あばたもエクボ」というのはいただけないような気がします。
 また、もう一人の主人公ロレンツォも、彼女の体重の多さに反応しているものの、彼女自身の思慮深さやその見識を知っていき、彼女をリスペクトしていきます。つまり、この場合、彼女の外見と、彼女の賢さをひき替えて、あばただけど、エクボに見える、とは、言っていないのです。したがって、タイトルは、そのままの「見る人次第で」で、いいんじゃないかと思うのです。これなら、『見る人の確かな目」という意味が前面に出てきて、話の本筋になるような気がします。
 
 さて、ここでも、美術収集家でもある作者のジェフリー・アーチャーは、たくさんの芸術家たちを、本文に散りばめます。主人公の一人のロレンツォが美術商という職業であり、体重の多さを引き合いに出される大金持ちの一人娘アンジェリーナは、結果、見る目のある美術品コレクターという設定なのです。
 カナレットから始まり、カラヴァッジオ、ベルリーニ、ダ・ヴィンチ、そして、庭にはムーア、プランクーシ、エプスタイン、ミロ、ジャコメッティ、ポテロ・・・ (続く) 

☆写真は、スイス オスカー・ラインハルトコレクション「アム・レマーホルツ」➡➡の庭、「見る人次第で」後ろの栗鼠に惹かれる人もいるでしょう。

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