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みんなみすべくきたすべく

タラスコンの乗合馬車

上野2j
(承前)
 「ゴッホ展ーー巡りゆく日本の夢」展(東京都美術館~2018年1月8日)➡➡に来ていた本邦初公開の「タラスコンの乗合馬車」は 「陽気なタルタラン」(小川泰一訳 岩波文庫)に出てきます。 

 ほら吹きタルタランも、ついに地元を出てアルジェリアで獅子狩りに出発、マルセイユ経由で、アルジェリアに。ところが獅子は居ず・・・
 ある日、古ぼけた大昔の乘合馬車に乗って、うとうと・・・・
 すると、
≪「タルタランさん!タルタランさん!」「俺を呼ぶなあ誰だ?」「私(わっし)わですよ、タルタランさん。お分かりになりませんかい?私(わっし)はーーー二十年昔の話ですがね!---タラスコンからニームまでの往復をやってゐた乘合馬車の慣れの果です。・・・・あんた方が、あんただのあんたのお友達ですな、ジョンキエールやベルガルド方面へ帽子狩りに御出馬って時にや、何度お伴をしたか知れませんや!・・・・」(中略)・・・・・「だが、ね君、君あ一體こんな處へ何しにきたんだい?」「へえ、お訊ねではございますがタルタランさん、誰がこんな處へ好きこのんで來るものぢやありません。・・・ボーケール鐡道が敷けた、貴様なんざ何の役にも立たねえ、亜弗利加へやつちまへつてつ次第なんでして。・・・もっとも私(わっし)一人ぢやありませんや!ふらんすの中の乘合は、どいつもこいつも私(わっし)同様島流し。こんなもなあ飛んでもねえ時代遅れだとか何とか云はれて、みんな此處へ追つ拂はれ、獄舎の苦しみを嘗めさせられてるんでさ。・・・・・ふらんすでもってあんた方がアルジェリア鐡道つて名でよんでいるのが、かく申す我々なんですよ。・・・ねえ!タルタランさん、私(わっし)あ、あの立派なタラスコンが懐かしくってならねえ!…(後略)・・・・≫

・・・・と、乗合馬車の愚痴は延々続きます。
話を読んでからこの絵を見ると、ふーん、この馬車もその運命の日が近いの?などと、感情移入して見てしまいます。絵だけ見ると、明るい日射しのタラスコンの町で、停車しているだけの馬車なのですが。

 どうも、ゴッホと言えば、耳を切った人、精神を病んだ人というイメージで捉えがちですが、もっと、いろんな作品を見ていけば、穏やかで明るい面を知ることができるかもと、思いを新たにしています。(続く)

*「アルプスのタルタラン」(畠中敏郎訳 岩波文庫)➡➡

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