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ラージャのダイヤモンド

入り口j
 「新アラビヤ夜話」(南條竹則・坂本あおい訳 光文社文庫)
一見、短篇集に見えるこの夜話は、どれも続いていて、全部、通して読むほうが満足いくものになっています。

 ボヘミヤの王子フロリゼルが身分を隠して、どろどろした世界に関わっていく。それが、つながっていき、一つの方向が見えていく・・・といったお話の構成です。
個人的には、全てが、納得のいく面白いものというわけではありませんが、「丸箱の話」は、軽いおはなし運びも幸いして、一気に読ませてくれました。後半、ちょっとトーンダウンしてしまいますが、それにしても、スティーヴンスンのお話つくりはうまい。

 話は、たわいのない「丸箱」に秘密が隠され、甘ちゃんの若者が、秘密の片棒を担ぐものの、その帽子箱の中には、なんと!・・・といった話。
 その中に入っていたものが、とんでもないものだったがために、そのあと、いろんな人が関っていき、その後、ボヘミヤの王子フロリゼルが、いかに関わってくるか・・・が、この「新アラビア夜話」の後半部分の流れです。

 あんまり、書いてしまうと、このサスペンス仕立てのお話を読むときに、面白くなくなってしまいそうですが、後半部のタイトルにもなっている「ラージャのダイヤモンド」についての描写は、こんなのです。

≪彼は、宝石のことは何も知らなかったが、「ラージャのダイヤモンド」は誰の目にもそれとわかる驚くべき逸品だった。もしも村の子供がこれを見つけたら、金切り声を上げて近所の家に駆け込むだろうし、未開人なら、かくも堂々たる呪物の前にひれ伏して拝むだろう。その宝石の美しさは若い聖職者の目を喜ばせ、その計り知れぬ価値は、彼の知性を圧倒した。自分が今手にしているものは、大主教区の多年の収入よりもっと価値があるのだ――イーリやケルンよりも立派な大聖堂をそれ一つで建てられるのだ――そして、これを所有するものは労働という呪いから永久に解放され、何の気苦労も障害もなしに、悠々と好きなことをして暮らせるのだ。ダイヤモンドをふと裏返してみると、新しい輝きを帯びた光が放たれ、彼の心臓までも射貫くようだった。  人の運命を左右する行動は、しばしば一瞬のうちに、それも人間の理性的な部分の命令を待たずして、行われるものだ。≫(続く)
☆写真は、英国 ハンプトンコート 通用門

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