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みんなみすべくきたすべく

万人の姿が映っている鏡

 ロートホルン16j
  夏目金之助(漱石)『英訳「方丈記」序文』に、
≪天才の文学作品にはあらゆるものが含まれている。それは、驚くべき正確さでとらえられた万人の姿がそこに映っている鏡なのだ。≫とあります。(出典:辻邦夫「黄金の時刻の滴り」の「野分のあと」の章前にある紹介文の一部)
 
 この文に出会ったとき、ああ、この「文学作品」という箇所を「絵画作品」という言葉に置き換えても可能だと思いました。もっと細かいことを言うなら、画家リチャード・ダッドの「妖精のきこりの見事な一撃」という作品と置き換えることもできました。
 「妖精の一撃」の絵を、万人の写っている姿だととらえると、わかりやすい。

 そして、夏目は、続けます。
≪それはまた清新な泉であって、火のような情熱の渇きを癒し、無気力な倦怠した精神を活性化し、火照った混乱した頭を冷やし、すべてのものに精神的快楽のデリケートな感覚を与えているのだ。すべてを元気づける万能薬であり、心という心を高揚させる強壮剤のようなものなのである。≫

 つまり、先の「文学作品」は「芸術作品」という言葉に置き換えても、なんの支障もないのがわかります。

 この英訳を読んだことがないのにも関わらず、ここに引用したのは、辻邦夫の新刊文庫(講談社文芸文庫)に出ていたからです。(続く)
*「黄金の時刻の滴り」(辻邦生 講談社文芸文庫)
☆写真は、スイス ロートホルンからブリエンツ湖を見る。
 

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