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みんなみすべくきたすべく

慶事を喜ぶ

          大江ゆかりj
 「丸谷才一 全集10 」(文藝春秋)を読んでいたら、こんな文が入っていました。同時代の文学者への章です。
 書き出しから、うれしいという気持ちがあふれています。「慶事を喜ぶ 大江健三郎」
≪大江健三郎さんのノーベル賞受賞を喜ぶ。わたしはとても嬉しくて、正直、何だかほっとした。残念なのはただ一つ、いろんな新聞の朝刊に大江さんの破顔一笑の写真が出てゐないこと。顔写真はみんな、もちろん沈んだ表情ではないけれど、ほほゑむ直前くらいゐなんですね。ところがあの人は笑顔千両なんです。・・・・≫

 で、思い出したことがあります。ずいぶん前のこと、大江健三郎がノーベル賞を受賞するより前だったと思います。
 大阪のお話の会が主催する講演会に氏が講演に来たのです。「昔話と私」といったようなタイトルだったと思います。自分の幼い頃、語ってもらったお話、そのときの様子など、それこそ、破顔一笑、たのしげに話されているのを聴きました。
 テレビなんかで、社会的な発言をなさっている時の緊張した面持ちや喋り方ではありません。聴衆にも、お話の楽しさが伝わるのです。こわごわ、足を運んだのですが、なんのなんの、大江健三郎のファンになって帰りました。
 それまでも、何冊かの彼の小説を読んだことはありました。また、何冊かの岩波新書には啓蒙されたものの、作家大江健三郎はとっつきにくい存在でした。
 が、そのあと、障害を持つご長男の話などを含め 『「自分の木」の下で』『「新しい人」の方へ』という子供向きに書かれた本(大江ゆかり画 朝日新聞社 朝日文庫)が出て、ずいぶん読みやすくなったと感じたものでした。

 もう一つ、この講演会には後日談があります。芥川賞作家で、社会的にも知名度の高い氏を講演者に招くなんて、さぞや、講演料が大変だったでしょう?と主催者側に お聞きしたら、意外な答えが返ってきました。
 「交通費と、こちらが用意できる範囲の講演料でいいという話だったので、嘘のような講演料で話してくださったのだ」と・・・

☆写真は『「自分の木」の下で』(大江健三郎 大江ゆかり画 朝日新聞社)の「なぜ子供は学校に行かねばならないのか」の章の画

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