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みんなみすべくきたすべく

安愚楽鍋

別邸4j
 持ち歩きにぴったりの薄っぺらな本。あんまり薄いので、復刊されたときから、今まで見失っていたという次第。
 それは、「安愚息楽鍋」(仮名垣魯文作 小林智賀平校注 岩波文庫)

 「安愚息楽鍋」を調べると、牛鍋とあります。すき焼きとどう違うのかよくわからないものの、およそのイメージは、同じようなものらしい。まだ、獣肉…牛肉を食べるのが一般的でない、いわゆる文明開化の時期、東京方面で、一種の流行だったようです。
 
 そのトレンドの牛肉を、いろんな職種、年齢、男女が食し、楽しむという話で、一話完結形式。解説に、≪こんな際物(きわもの)話≫とあります。比べるのはおかしいかもしれないものの、チョーサーの「カンタベリー物語」の空気を感じたのは、変?話がもっと長いとはいえ、「カンタベリー物語」(岩波文庫)も、一話完結のかなり際物話。

 早い話が、牛肉は美味しいよ。こんな西洋のものをまだ食べてないの?へへん、遅れてるぅ・・・といったところでしょうか。文明開化期の滑稽風俗話なのです。語調よく、生き生きとしています。

≪天地は萬物の父母、人は萬物の霊、故(かるが)ゆゑに五穀草木鳥獣魚肉(ごこくさうもくてうじうぎょにく)、是が食となるは、自然の理にして、これを食ふこと、人の性なり。昔々の里諺に、盲文爺(ももんぢい)のたぬき汁、因果応報穢れを浄むる、かちかち山の切火打。あら玉うさぎも吸物で、味をしめこの喰初(くひそめ)に、そろそろ開花(ひらけ)し、西洋料理。その効能も深見草、牡丹紅葉の季(とき)をきらはず。猪よりさきへだらだら歩行(あるき)、よし遅くとも怠らず、往来(ゆきき)絶ざる浅草通行(どほり)。御蔵前(おんくらまえ)に定舗(ぢゃうみせ)の、名も高籏の牛肉鍋。・・・・≫(続く)
☆写真は、京都 旧三井下賀茂別邸の銀杏。
 

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