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みんなみすべくきたすべく

自然に対する冒涜

      駅の絵j
(承前)
 ル・コルビジェは、年老いた両親のための家を 世界文化遺産に登録されているラヴォー地区の葡萄畑の裾野のそのまた裾のレマン湖畔に作ります。

敷地には条件がありました。
≪太陽が南にあること(ありがたいことだ)。さらに山並みを背景に、湖が南に向かって広がっていること。また東から西にかけて見渡せば、湖とそこに映えるアルプスの山々が君臨していること。こうした条件はこの家の設計方針を決定している。つまり奥行きは4mしかないが、南に面して長さ16mの正面を持つ家が横たわっている。その正面にあるただひとつの窓は、11mもの長さがある(私は“ひとつ”の窓と言ったのだ)。≫

そんな条件に合った土地をル・コルビジェは見つけました。
≪ポケットに図面を入れて、長い間敷地を探し歩いた。いくつかの候補地を検討したが、ある日、丘の上からまさに思い通りの敷地を見つけ出した(1923年のことだった)。
この敷地は湖畔にあった。ここはまるでこの小さな家を待っていたかのようであった。この土地の売り主である、ぶどう栽培者の家族たちは、愛想のいい好人物であった。みんなで“ぶどう酒”を傾けた。≫

ところが、この小さな家ができた後には、、こんなことがありました。最後の「罪状」という短い章。
≪1924年にこの小さな家が完成し、私の両親がここに移り住もうとしていたころ、ここの町長はある集会をもち、この地に建てられたようなたぐいの建築物は、実のところ“自然に対する冒涜”に値するものではないかと計った。さらにこの家が建ったことによって、今後この種の建物がいく棟か(恐らく)建設されるのではないかと懸念し、これが二度と模倣されないようにと、この種の建物を禁じた。≫

 確かに、新奇なものに臆病になるのはわかりますが、「もう二度とこの種の建物を建ててはいけない」などと言ってから、100年近くなる昨今、世界文化遺産に登録された「小さな家」。ごく近くには、ネスレ本社のお洒落な建物が建っています。

*「小さな家」(ル・コルビジェ著 森田一敏訳 集文社)
☆写真は、ヴェヴェイ駅に飾ってあった、登山電車(ケーブルカー)で上ったペルラン山から見た風景。描かれてませんが、緑の斜面のすぐ下の湖畔に「小さな家」はあります。ル・コルビジェの生家は、右手、白くいただいた山の方。

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