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みんなみすべくきたすべく

陽春の好天気がつづく

五月の薔薇7j
(承前)
 「モーパッサン短編集Ⅱ」は、都会ものの短編が収録されています。

「短編集Ⅰ」に書かれた田舎の貪欲さは、影をひそめ、「短編集Ⅱ」では、田舎とは違った皮肉や見栄が表れます。
 もちろん、そこにも、時に可笑しく時に哀しく、人間模様が書かれます。水辺での話が多いのも「短編集Ⅱ」の特徴かもしれません。
  以下の「春に寄す」という短編の出初めは、どうでしょう。セーヌであろうが、19世紀であろうが、今年の日本の春であろうが、若かろうが、老けていようが、同じ気持ちかと思います。

≪ようやく、陽春の好天気がつづく。大地は目ざめて、若返る。空気のかぐわしい温気(うんき)が、肌をなで、胸に入り、心臓そのものにまでしみこむかと思われる。このような季節になると、なんということもなく、幸福にたいする漠然とした欲望がわいてくる。ただ走ってみたい。出まかせに歩いてみたい。何かいい目にありつきたい。春を満喫したい。そんな欲望にかられる。≫

 ただ、この和やかな空気は、日本なら3月の終わり4月の初めといったところですが、そこはヨーロッパのこと、この文は5月なのです。(続く)

「モーパッサン短編集 Ⅰ~Ⅲ」(青柳瑞穂:新潮文庫) 

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