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月と6ペンス

ゴーギャンj
(「短編小説部門」から続き:承前)
 サマセット・モームの「ジゴロとジゴレット」と同じ装丁で、金原瑞人訳「月と六ペンス」が並んでいたので、読みました。以前は、中野好夫訳で出ていた新潮文庫です。
 この有名な話は、ゴーギャンをモデル(ヒント)にストリックランドという人物を産み出しました。が、しかし、それが、ゴーギャンかと思われるのは、主に、画家になる前の職業(証券取引所の仲買人)と、晩年タヒチで暮らしたというところでしょうか。

 第3章冒頭に「ここまでの話はすべて本筋には関係ない。」とあるように、第1・2章は、奥歯にものがはさまったような感じだし、最後のほう、タヒチの話も、とってつけたような感じさえします。モデルにした人物が有名画家なだけに、制約もあったのかなと、素人の頭をかすめました。

 俄然、面白くなるのは、ストリックランドが、ロンドンの家庭を捨て、パリで暮らし、善人のストルーヴェという画家とその妻が、絡んでくる展開です。つまり、モーム自身の創作と思われる部分は、生き生きと描かれ、読み物として面白い。

 が、はじめ、
≪ストリックランドは、際立った部分がなにもない。善良で退屈で正直な、絵に描いたような凡人だった。悪い人間ではないが、友人になりたいとは思えない。つまり、どうでもいい存在なのだ。まっとうな社会人であり、よき夫であり父であり、まじめな仲買人ではあるのだろう。だが、時間をかけて相手をするほどの価値はない。≫と、若き「わたし」が言い切る、その凡人がいわば、狂気にも思える生き方を選ぶ展開は、「うそぉ」と思うほどの飛躍があります。(続く)

*「月と6ペンス」(サマセット・モーム 金原瑞人訳 新潮文庫 行方昭夫訳 岩波文庫)
*「ジゴロとジゴレットーモーム傑作選」(サマセット・モーム 金原瑞人訳 新潮文庫)

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