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九つの童話

              人魚j
(承前)
 さて、オスカー・ワイルドを今まで、買ったまま読まなかったりしてきたのには、「幸福な王子ーワイルド童話全集」(西村孝二訳 新潮文庫)の読後の印象が悪く、手を出さなかったとも言えます。

 「幸福な王子」には、「ワイルド童話全集」とあります。つまり9つの童話、それらがこの文庫の中に収められています。とはいえ、この童話集は、子どものもの?9つの話の多くは、未来がない。失望や絶望が満ちています。残酷さも容赦なく描かれています。

 有名な「幸福な王子」は、その自己犠牲による展開が、好きになれないままですし、「ナイチンゲールとばらの花」は自己犠牲の上にさらにハッピーエンドでもない。「わがままな大男」は、最後が哀しい。ここまでは、少しは救いがあるのですが、「忠実な友達」は残酷な裏切りだし、「すばらしいロケット」は、哀れです。昔は、多分、この辺りで、読むのをやめていたと思います。うんざりしていたような。 

 「若い王」は、キリスト教の考えを子どもたちに教訓として伝えようとし、かなり深い。「王女の誕生日」は、ファージョンの王女さまものや、「小さいお嬢さまのバラ」の雰囲気かと期待しながら、読み進んだら、全然!違う。残忍で、胸が悪くなります。 「漁士とその魂」も、アンデルセンの「人魚姫」に似ている、と、思ったら全然違う!「人魚姫」も、自己犠牲の世界ではあるけれど、ここまで、重くないし、筋立て自体もアンデルセンはすっきり、わかりやすい。
 そして、最後の「星の子」は、昔話風なのですが、昔話のようなわかりやすいハッピーエンドとはならず、教訓色が勝ちすぎている。政府批判から貧しさ、貧しさから生まれる悲劇、教訓・・・といった話です。

  確かに、昔話にも容赦ない残酷さが書かれています。がしかし、昔話は、事細かに描写せず、その「事」だけを伝えます。ワイルドの描写する残酷さとは質の違うものだと思います。

 等と、ワイルドの童話のことを考えていたら、「オスカー・ワイルド――〈犯罪者〉にして芸術家」(宮崎かすみ著 中公新書)に≪ワイルドは、これを大人のための童話だと言った≫とありました。続けて、≪諧謔と皮肉に満ちた童話と言い換えることもできる。≫そうなんだ!子ども向け童話とは違うんだ。「童話」と銘打っているし、「幸福な王子」や「わがままな大男」は、絵本にもなっていて、てっきり、子どものものかと誤解していました。
 とはいっても、これらのお話を、戯曲でも小説でもなく童話として提示したところにワイルドの深い闇を感じます。饒舌で暗い。(続く)
☆写真は、スイス オーバーホーヘン城

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