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みんなみすべくきたすべく

幕があくと

花束j
(承前)
 「青い鳥」では、先の衣装だけでなく、舞台設定にも、細かい指示を出し、その舞台をリアリティのあるものにしています。

 例えば、第4幕第9場「幸福の花園」
≪幕があくと、花園の前方に大理石の高い柱の並んだ大広間があらわれる。柱の間の奥の方には、金色のひもでつるされたどっしりした紫のたれ幕がはりめぐらされている。≫

 ここまでは、ごく普通の戯曲の舞台説明だと思います。

≪建築様式は、ルネサンスのヴェネチア派やフランドル派の活躍した、奔放で、豪華な時代(ヴェロネーゼやルーベンスの絵に見られるような)を思い出させるものである。≫

 ふむ、ふむ、なかなかのこだわり。

≪花飾りや、豊富な角やふさや、つぼや、彫像や、やたらに金箔をおいた装飾品などがいたるところに飾られている。―――部屋の真ん中には、碧玉や金箔で飾られたどっしりした魔法のテーブルがおいてあり、その上にはろうそく立てや、ガラスのうつわや、いろいろのごちそうを盛った金銀のさらが、ごたごたとのっている。テーブルのまわりでは、この世で「一番ふとりかえった幸福」たちが、けものの肉や、めずらしいくだものや、水差しや、ひっくり返ったつぼなどの間で、食ったり、飲んだり、叫んだり、騒ぎ回ったり、ごろごろころがったり、眠ったりしている。みんなは信じられないほど太りかえって大きく、赤ら顔で、ビロードや錦の着物を着、頭には金や真珠や宝石の飾りをつけている。・・・・・・≫

 以上、本文じゃなく、舞台の設えの説明なのです。

 そして、この舞台袖でチルチル、ミチル、イヌ、ネコ、パン、砂糖、光がいるのですが、これだけ、舞台説明をしてもらったら、観劇せずとも、目に見えるようだし、ざわめきも聞こえてきそうです。(続く)

*「青い鳥」(メーテルリンク 堀口大學訳 新潮文庫)

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