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月と狂言師

眉月j
(承前)
 狂言小舞「細雪」を見てから、慌てて、谷崎潤一郎「月と狂言師」(中公文庫)を読みました。「月と狂言師」以外には、日記やエッセイが入っています。
 
 谷崎は終戦後、久しぶりに月見の宴にでかけます。そこは、南禅寺境内の上田邸。南禅寺の塔頭の中でも林泉と建物の立派さで鳴っている金地院の寺中、しかも池水や座敷の配置が月を愛でるのに好都合、その上、茂山千作翁や千五郎の狂言もあり、というご招待。

お茶の後は、「呼声」と言われる子どもの狂言があり、小舞があり、狂言があり、番外の狂言もあり、
≪そんなことをしているうちにようよう前栽に暮色が生じ、そろそろ月の出に間もないらしい空あいになった。・・・・・(中略)・・・あの気がかりであった山の端の雲はいつの間にか跡形もなく消え失せて、今こそ空は一点のかげりもなくなっているのであった。ほんとうに十五夜の晩にこんなにも清く天が澄むと云うことは十年に一度もあるものではなかろう。≫

 そんな折り、茂山千作翁が何やらしずかに口のうちで微吟し出し、その歌を知っている者は合唱し出し、だんだん声も大きくなってきます。また別の歌を微吟し出すと、誰かが「ああ、あの辺がぼうっとして来ました、あれは月白らしいですな。」といい、≪いよいよ山の彼方の空が明るくなったが、何だか月が大勢の合唱に釣り出されつつ、しずしずと舞台へセリ上がって来る感じで、その堂々たる出方は千両役者が登場するようでもある。≫この後も月の歌は続き、≪月はすでに山の端を離れて池の面が輝き出した。圓かな影が水に映っているばかりでなく、睡蓮の葉の一つ一つにも宿りはじめた。≫

 そして、月が中天に懸ると、酒席となり、各人、隠し藝の披露となっていくのです。
 
          睡蓮j

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